山行日 2022年10月29日~30日
メンバー (L)長浜、小芝(泰)、古屋、青木、橋本
山をやっている人であれば知らない人はいないであろう、下ノ廊下。
今年の春、たまたま古屋さんと阿曽原温泉の話をしていたら、秋に下ノ廊下に行こうという話になった。せっかくならリーダーやってみたら?という打診を受けたので、たしか上級者向けルートのはずだけど、リーダー大丈夫かな~と思い躊躇しながらもYESと首を縦に振った。
そういえば、小芝さんからも、下ノ廊下の山行出すなら行くよ、と入会当時から言われていた。このふたりは、何年か前に、西村さんとの3人パーティで上ノ廊下を制し、次は下ノ廊下を、という話のようだ。心強い2人の他に、下ノ廊下2回目の青木さん、橋本さんもメンバーに加わった。
最近、山行に向かう前に、その土地に関連する本を読んでから訪れるようにしている。今回の課題図書である吉村昭の「高熱隧道」を読み終え、興奮冷めやらぬまま富山へと向かった。
【10月29日】小雨のち曇り
金曜日の夜に、バスタ新宿発の夜行バスに乗車し、午前4時半には黒部ICで下車。夜明け前の真っ暗な中、ヘッデンをつけてローソン黒部インター東店まで歩く。店内には鱒寿司や黒とろろおにぎりなど、ご当地ものが並び、早速、富山に来たのだと実感した。
行動食を調達した後は、新黒部駅まで歩き、新黒部駅から宇奈月温泉駅までは富山地鉄本線の各駅停車に乗り込む。
宇奈月温泉駅から宇奈月駅までは徒歩5分。宇奈月駅の建物の2階には資料展示スペースの他に、テーブルや椅子がある休憩スペースがあったので、そこで朝ごはんを済ませた。
宇奈月駅から欅平駅までは黒部峡谷鉄道のトロッコ列車の始発便に乗り込むのだが、出発前には改札前に大行列ができていた。トロッコ列車の一般車(窓なし)の移動がとても寒かったという過去の山行記録を参考に、寒さに激弱な私はダウン上下と雨具を着込んで備えた。
多くの観光客や山装備の人々とともに乗り込んだトロッコ列車は、まるでテーマパークのアトラクションのようだ。列車内では室井滋さんによるアナウンスで、各名所が案内される。
途中、ふとした時に、後ろの席の方から、「あれが今年起きた泡(ホウ)雪崩の後ですよ!」と言われ、隣に座っていた橋本さんと、その現場をまじまじと見つめた。確かに、木々が根こそぎ倒れ、斜面が削れているように見える。声をかけてくれた方は、地元の観光関連事業者の方とのこと。
高熱隧道の中で、「ホウ」の恐ろしさを知ってはいたが、あれがその現場か、そして最近の出来事なのか・・・と思うと黒部峡谷の自然の脅威を改めて感じた。
欅平駅で装備を整え、10時15分頃には歩き始める。私は、展望台までの急登で早速バテてしまったが、展望台からは、水平歩道という名の通り、ほぼ水平移動で比較的楽に歩くことができた。水平歩道は岩をくり抜いたような狭い道が続き、歩くのに緊張するような場所も。
途中、真っ暗なトンネルの中に水が流れている箇所もあり、つま先歩きしたり、へつったりしながら歩いたので濡れずに済んだが、靴は、防水加工されているハイカットシューズを選んだ方が良さそうだ。
14時30分ごろには1日目の目的地である阿曽原温泉へ到着。テント場の両サイドは埋まってきてはいるものの、中央のスペースは空いていたので、45テントと23テンのスペースを堂々と確保。45テンの天井が他に比べて高く、デカテントを張っているのが遠目でも分かりやすいのが嬉しくも少し気恥ずかしい。
阿曽原温泉は20時までの奇数時間は女性、偶数時間は男性、20時以降は混浴と分かれている。早速、15時からの女性タイムに入浴。
温泉までの坂を降りていくと、そこまで大きくない湯船のほかに、すのこが敷かれた脱衣所があるくらいで、何とも野趣溢れる佇まい。湯船の淵は、ほぼほぼ埋まりつつあった。温泉の温度もとても気持ちよく、紅葉を眺めながらのんびり温泉に浸かり、昨晩からの旅の疲れを癒した。
女性の時間帯は比較的のんびりした感じであったが、男性の時間帯は芋洗い状態、湯船に30人入るかチャレンジをしていたそうで大盛り上がりだったようである。
入浴後は、闇おでん大会。各自が思い思いに持ち寄った具材で、とても豪華な夕食となった。
【10月30日】晴れ
岩盤温度が160度を超える場所で、ダイナマイトを使った命懸けの作業をしてこの隧道が生まれたと思うと感慨深い。
そして、今回のメンバーが皆、高熱隧道を読んでいたので、みんな同じところで感動できるのも楽しい(笑)。
その後、仙人谷ダム、S字峡、吊り橋などを越え、十字峡に到着。ここは2つの川が十字に交差している場所で迫力があり、下ノ廊下のなかでも行ってみたかった場所のひとつだ。轟々と水が流れる十字峡を見渡せる展望台で、しばらく休憩を取った。
十字峡の展望台を後にした後もなお、川沿いを歩いていくと、登山道整備の用具を置いている物置場、丸太を組んだ足場、巨大な雪渓、鮮やかな紅葉など登山道の雰囲気がコロコロと変わり、全く飽きなくて楽しい。
ひたすら川沿いを歩いていくと、突然、前を歩いている橋本さんが、「あ、あれがゴールかも!」と呟いた。その方向を見ると、白霧に包まれた巨大な壁が現れた。うん、あれが今回のゴールの黒部ダムだ。
川を渡り急坂を越えると、登山道から黒部ダムへ向かう近代的な道となり、いきなり現代社会へタイムスリップした気がした。
黒部ダム前で記念写真を撮り、レストハウスでダムカレーやラーメンと共に乾杯。
松本駅からの電車まで時間に余裕があったので、途中、薬師の湯に入浴し、松本駅前の居酒屋で再び乾杯をしてから帰京した。
下ノ廊下は、本当にここは日本なのか!?と思うような圧倒的な自然の絶景、黒部峡谷のダムや隧道建設の歴史を感じられる施設など、見どころが随所に散りばめられ、どこも興味深かった。2024年度に一般開放される黒部宇奈月キャニオンルートもいつか訪れてみたい。
〈移動〉
(往路)
バスタ新宿~黒部IC:富山地鉄高速バス
黒部IC~新黒部駅:徒歩
新黒部駅~宇奈月温泉駅:富山地鉄本線
宇奈月温泉駅~宇奈月駅:徒歩
宇奈月駅~欅平駅:黒部峡谷鉄道
(復路)
黒部ダム~扇沢駅:関電トンネル電気バス
扇沢駅~大町温泉郷~信濃大町駅:扇沢線バス
信濃大町駅~松本駅:大糸線
松本駅~新宿駅:特急あずさ
【10月29日】 | 欅平駅(10:15) → 阿曽原温泉(14:30) |
【10月30日】 | 阿曽原温泉(4:10) → 十字峡(7:20) → 黒部ダム(12:47) |