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雪山登山・富士山
眞鶴 千尋

山行日 2023年5月27日~28日
メンバー (L)眞鶴(千)、眞鶴(哲)、鎌倉、高橋(史)

 90周年記念山行のテーマは「世界遺産」で、企画委員の「富士山も世界遺産」というメッセージを見て、行った事ないし、何もなければ今後行く事がないだろうし、良い機会と思い企画する事にした。鎌ちゃんが興味を持ってくれて、眞鶴くんはお鉢巡りするなら行くと。横チンは興味がなさそうだったけどサミットフォールの取り付きに行く提案してくれて、この4人で行く事になった。金曜夜に待ち合わせて富士宮口の5号目駐車場で前泊。この地点で既に標高2,400m、水場はないが簡易トイレはあった。この日は軽く飲んで眠りについた。

5月27日(土)1日目
サプライズの仕掛け人(眩) 7時に出発。周りはスキーヤーか日帰り登山者しかいない中でテン泊装備(プラス水1人2L)の我々は少々目立っていたと思う。「このトレーニングを経てどこの山に行くんですか」といったニュアンスの声掛けもあった。それぞれ15~20キロくらい担いでいて、雪はなく日差しはあり、景色が変わらない単調な道を淡々と登る。小屋が見える度に「ここで引き返そう」などの言葉が行き交う。8号目(3,200m)からようやく積雪の為アイゼン着用。夏道の終了に少しテンションが上がった。9合目から私は体力と集中力が落ちてきて、少し動くだけでゼーハー息があがってしまい皆をだいぶ待たせてしまった。登山開始から8時間、15時頃にようやく登頂。剣ヶ峰(3,776m)は行ってないけど3,713mくらい。長い登りが終わってほっとしていたその時、「結婚おめでとう」と横チンがシャンパンボトルを差し出してくれた(!)重厚感のある箱付のボトルで、これを担ぐとは本当に強いと思った。さらにキャビア、チーズ、生ハム、無花果とザックから様々な食材が出てきた。
 神社の裏手、ちょうどサミットフォールと剣ヶ峰が見えるポイントにテントを張って、横チンと鎌ちゃんがテントの手前にテーブルを作ってくれた。シャンパン、食材、リボンなどの装飾も追加されて、まるで結婚式のメインテーブルのよう。結婚式を挙げないのでせめて翌日のご来光でフォトウエディングをとドレスとタキシードを持ってきていたのだが、今着るべきだと急いで着替えた。着替え終えると鎌ちゃんお手製のウェディングケーキが出てきた。何から何まで感激すぎる。シャンパンで乾杯して、ケーキカットして、ファーストバイトして、立派な結婚式(披露宴?)を作ってもらった。目の前には少しだけ日が落ちかけている富士山頂の景色が広がっていて、その中に企画してくれたふたりの笑顔があって、その光景がなんとも美しい。最高のサプライズで一生の思い出ができた。その後は冷えてきたのでテントに入って、鎌ちゃんのもつ鍋を食べた。ニラとニンニクが効いていて大変美味しかった。富士山の標高のせいか酔いの回りが早く、3名ほど高山病っぽくなっていた事もあり21時前には就寝した。

5月28日(日)2日目
ちゃっかり載せてみました  夜中に強風で何度も目が覚めた。風は止む気配がなく、3時半頃横チンに「テント壊れるかも」と起こされた。もしもの為に靴を履いて、ナイフ等をポケットに忍ばせ、テントの四隅にそれぞれ配置した。鎌ちゃんは風上にいた為に一睡もできなかったようだ。それぞれ仮眠に入るが、2時間経っても一向に強風は止まない。私は前日のキジの際に滑って20mほど暗闇の滑り台を経験した事もありこの強風の中で下山する自信がなく、もう1泊かもと思いはじめていた。6時半頃、場所によっては電波が入るから天気見てくると横チンが行動した。ピッケルはテントの四隅だし、アイゼンだけでこの強風にさらされるのは危険と思ったが無事を祈りつつも行ってもらった。結果は、これからもっと風が強くなるのですぐに下山すべきという判断だった。2人がテント内に残ってザックと人で四隅を押さえて、もう2人が四隅のピッケルを抜いて、その後はテントが吹き飛ばないようにザックをテント内に残しつつ4人でテントの端を持って風を防げる場所に避難。かなり緊張感があったがうまくいって、テントを畳んで下山準備を始めた。風速は最大18mくらいになっていたようで、私たちは最も風のあたる場所にテントを張っていたらしい。下山は無理かもと思ったし、こんな日に登山客はいないと思ったが実際には沢山いた。ただお鉢めぐりとサミットフォールは断念して下山した。サプライズの感謝・感激に加えて、風に対する恐怖、滑ってしまった注意力の無さや、体力の無さ、色々な事があってこの富士山の山行は忘れられないものになりそうです。

〈コースタイム〉
【5月27日】 5合目駐車場(7:00) → 頂上富士館(15:00)
【5月28日】 頂上富士館(7:30) → 5合目駐車場(10:30)

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