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岩登り・古賀志山マラ岩
鎌倉 季美恵

山行日 2023年2月23日
メンバー (L)眞鶴、渡辺(靖)、高橋(史)、橋本、鎌倉

 「湯河原の岩に登ってみる?」
 1月の終わり、寒さの増しただだっ広いクライミングジムで高橋さんに岩登りの例会に誘われた。
 まだ会に正式に入っていない私はクライミングジムに通い始めて2ヶ月位の技術しかなく、5.9のルートをトップロープでも足を震えさせながら登る位の初心者であった。
 こんな状態で本物の岩に登れるのか?不安はあったが誘われた事が嬉しく二つ返事で参加を希望した。
 そこから程なくして入会し例会当日を迎えた。
マラ岩の足場で準備を始める眞鶴リーダー  当日、湯河原幕岩を予定していたが天候が崩れた為、栃木県古賀志山マラ岩に変更。
 南向きの岩と言ってもまだ2月、我々は暖かな岩場を求めていた。
 東川口駅に6時半に集合、高橋さんの車に全員がピックアップされ古賀志山までドライブ。先週登った山や今後の山行の話で盛り上がっているとあっという間に登山口駐車場へ到着した。
 8時過ぎ、各々準備を整え岩場に向かっていざ入山。公道を少し歩いたところにすぐに登山道があり山の中へ入っていった。古賀志山の頂上を目指す登山道もこの道を使ってもいけるようだ。道は落ち葉で柔らかく比較的歩きやすい。
 20~30分ほど歩いたところに突如剥き出しの巨岩が現れた。
 小さな神社と祠が薄暗い岩のくぼみに隠れるように佇み、粛然とした空気が漂っていた。「これが不動の滝エリアか・・・。」岩は上部から水が滴りさらに冷たさと静けさを増していた。全員で不動の滝エリアを少し観察した後、眞鶴リーダーを先頭にさらに奥へ進んだ。
 短い急登を登った先に3階建てのマンションほどの高さの岩が現れた。凹凸も少なくどっしりとした穏やかな表情をした岩、マラ岩だ。到着が早かったのか、ラッキーな事に誰もおらず貸し切り状態である!
 足場は岩から2~3m離れるとなだらかな崖になっておりそこでさえ岩と木の根のミックス、これはビレイヤーもなかなか肝を冷やす場所だ、少し平な場所を見つけシートを引き荷物を置いた。
 登りたい気持ちが逸り皆素早く準備を始める。 早速眞鶴リーダーが左端のルート"スリーナイン(5.9)"に取り付いた。何の苦も無く重力を感じさせないような身のこなしでスルスルと登ってゆく。上手な人を見ているといかにも簡単なルートのように思える。5分も経たずにトップロープを張って降りて来た。
 ビレイをしていた橋本さんが次に登り始めた、じっくりと考えながらでも確実に正確に登ってゆく。5.9のルートは皆、難なくクリアした。私はと言うと勢い良く登り始めたが中盤、何処に足を置けば良いかわからず真夏のセミのように長時間へばり付いてぎゃーぎゃーと騒いだ後、ズルをして(ヌンチャクを掴み)どうにか上まで登れたのであった。
スリーナインをじっくりと登る橋本氏  右端では高橋さん渡辺さんが"ワイワイ(5.9)"にロープを張ってくれていた。
 経験者の二人は問題なく楽しそうに登っていた。
 この後、眞鶴リーダーが"マラ岩クラック(5.9)"に取り付いた。中盤から斜めにクラックが入ったいやらしいルートだ。眞鶴リーダー、クラックの位置まで行くとクラックにぐっと拳を入れ込んだ、「がっちり止まる!」と、とても楽しそうにしていた。
 直ぐにロープが張られ次に私が登り始めた。全くもって何をどうすれば良いのか分からないポイントが登場、今年一番の大声で「テンション!」と叫んだ。少し休憩し再び登る、眞鶴リーダーの的確なアドバイスでもたつきながら徐々に登って行く、がしかし腕が悲鳴を上げて岩にしがみつくので精一杯である。
 マラ岩クラックと言う名のルートだが、無念にもクラックまで辿り着けずに降りたのであった。
 昼に近づき腹の虫が鳴き出した頃、本日のお誕生日の高橋さんを可愛い苺のロールケーキでお祝いをした。皆でケーキに舌鼓、岩場でお皿とフォークでケーキを頂くという優雅なひとときを過ごした。岩場にふわふわのロールケーキを持って来てくれた渡辺さんに感謝だ。
岩場で誕生日ケーキ!美味!
 午後からは太陽も出始め暖かな日差しの中で岩を登る事が出来た。
 マラ岩きっての人気ルート、"マライワキャリー(5.10a)"に眞鶴リーダーがロープを張り渡辺さん高橋さんが登った。このルートは途中でやや反り返ったポイントがありそこがどうやら核心らしい、反り返りのやや左に登り易いルートがあり逃れる事も可能だ。各々好きなルートでトップまで辿り付いていた。

 自然の岩場でのクライミングはジムクライミングの経験しかない私にとっては人それぞれ全く違う登り方でとても新鮮に見えた。これは掴める掴めない届く届かない、など人それぞれ全くムーブも違い、登れればどこを持っても良いしどこに足を置いても構わない。体格差や思考の差がこんなにも顕著に出るのだと感じた。
 そして皆がスラスラと登るルートだが私には何をどうすれば良いのか全く分からないのである。まだまだ経験も技術も足りていない事が如実に現れた。しかし皆、初心者の私にとても優しくどこをどう持つかなど色々教えてくれるのである。体力のある限りしがみ付き頑張ったがなかなか登れず悔しい思いをした。
 14時を過ぎた頃、ロープの回収作業が始まった。最後にマライワキャリーをリードで渡辺さんが登る姿は鳥のように身軽で清々しく一つ一つのムーブの動きが美しく見惚れてしまうほどであった。核心の反り返ったポイントも少し悩んでからあっさりと越えていった。いつかあんな風に登ってみたい、と思うのであった。

美しいムーブで核心を越える渡辺氏

 15時下山開始。15時半登山口駐車場へ到着。良い時間なのですぐに帰路に着いた。
 17時東川口駅に到着し解散した。心地良い天気の中、貸し切りでマラ岩を楽しめ各々の課題に真剣に取り組めた充実した1日であった。


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