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雪山登山・静寂の奥会津 大縦走
荻原 健一

山行日 2023年5月3日~6日
メンバー (L)荻原、永岡、川口、青木、渡辺(靖)

 岳人100ルートの「南会津のど真ん中は春なお真白き静寂の桃源郷」という言葉に誘われて、昨年GWの毛猛山塊・大縦走の続編として本山行を企画してみた。集まったメンバーは50代4名、40代1名の「シニア・ファイブ」だ!普段から気の置けない仲間たちばかりなので行く前から期待が膨らむ。このような長期山行においてメンバーシップは成否を決定する最重要ポイントなのだ。
 天気予報は後半が悪天予報だが、唯一のエスケープルートになる三ツ岩岳まではなんとか持ちそうなので、今山行の成功についてはある程度の確信をもって入山することが出来た。

【5月3日】終日晴れ
 只見駅に10:30に集合。新幹線を使うと自宅を早朝に出発すれば間に合う時間だ。只見線は昨秋に11年ぶりに全線が復旧し、このGWも乗り鉄、撮り鉄で大混雑だ。
 只見駅からは予約していたジャンボタクシーでいわなの里へ。ここはGWということもあり家族連れを中心に大変な賑わいだった。このいわなの里がそのまま会津朝日岳への登山口となっており、準備をしていよいよ大縦走の始まりだ!
 すぐにシーズンオフの為に橋が外されている渡渉ポイントとなるが飛び石伝いに上手く渡れた。初日で体も慣れておらず荷物も重いので、ゆっくりゆっくり登って約6時間で会津朝日の避難小屋に到着。登山口からは我々のみだったので誰も居ないことを期待したが、残念ながら先着が1名。お互い気を遣って今夜は早めの就寝となる。

まずは1座目の会津朝日岳(全部で10座) 【5月4日】終日晴れ
 さぁー、これからは我々だけの世界だ!まずは夜明けとともに会津朝日岳の山頂を目指す。小屋から約1時間で山頂へ。山頂からは昨年のこの時期に6日間かけて縦走した毛猛山塊の全容が見渡せて当時のメンバーだった川口さんと感慨にふける。
 山頂からはいよいよ登山道の無い世界の始まりとなる。いきなり鋸刃と呼ばれる狭い岩稜帯の藪漕ぎとなり洗礼を受けるが、ここを通過すると大幽朝日岳までの藪はそれほど濃くなくお昼には山頂に到着。この日は出来れば丸山岳にテン泊したいと考えており、この時までは問題なく行けると思っていた。ところがここからの下りがなかなか厳しく、藪もどんどん濃くなってくる。メンバーにもだいぶ疲れが出てきて、雪の出てくる独標1,442mと1,552mの間のコルまで4時間以上もかかってしまう。
 最後はなんとか雪のあるところまでという感じになってしまい、17時過ぎにようやく幕場に到着となる。みな満身創痍だったが、それでも夜は結構盛り上がってしまった。

大幽朝日岳から先の厳しい藪尾根

3座目となる丸山岳 【5月5日】終日晴れ
 昨日の遅れを取り戻すべく今日も早めの出発(5時前)とする。丸山岳まではうまく雪が繋がっており2時間ほどでなんなく山頂に到達する。
 丸山岳はこの山域の象徴的な存在であり、マイナー12名山にも選ばれている。もちろん登山道などなく、この山に登るには沢から行くか、無雪期に強烈な藪漕ぎで行くか、そしてこの時期の残雪期に行くかの選択肢しかないのだ。私は3年前の9月に沢からも登頂したが、沢の最後の詰めで強烈な藪漕ぎに苦しめられる中、突如現れた山頂の美しい湿原と池塘。そこに渡る風に包まれ、しばらく裸足になって昼寝をした心地良さが今も忘れられない。無雪期と残雪期の両方に登頂することを強くお勧めしたい。丸山岳から先は雪もたっぷりで山容はどこまでもたおやかである。雪もそこそこ締まっているので、わかんに履き替えることもなく、どんどん距離を稼いでいく。
 梵天岳、高幽山と順調にこなしていくが、高幽山あたりから風が止まり、気温も上昇。メンバーは暑さに苦しむことになる。途中、親子の熊に結構近い距離で出くわし肝を冷やすが、それも一瞬でその後も暑さに苦しみつつ、坪入山への長い登りでメンバーの体力は擦り減っていく。

会津駒ヶ岳へ続く稜線を見ながら坪入山(6座目)に向けての苦しい登り

 坪入山の山頂で昨日に続いて今日も満身創痍となるが、ここまで来てしまえば明日の下山は計算出来る。明後日の悪天がほぼ100%なので明日中に下山したいところだが、三ツ岩岳の手前からのエスケープは使いたくない。どうしても会津駒ヶ岳まで行ってから檜枝岐に下山するのだ、というリーダーの強い拘りにメンバーがしっかり応えてくれて、本日坪入山を越えることが出来たのだ。
 本山行の成功をほぼ確信しつつ、少し下った広くて平らな場所にテントを設営し、ほっとひと息、前夜祭も大いに盛り上がる。

ようやく辿り着いた10座目の会津駒ヶ岳山頂 【5月6日】曇り時々晴れ
 今日は早めに降りて温泉に入って民宿で大宴会!の予定なので、2時半起床の4時過ぎの出発となる。シニア山行としては珍しく早出の日々が続いている。窓明山の山頂付近の藪が気になるが、上手くルートを選んで藪漕ぎを最小限に抑えられた。
 窓明山から三ツ岩岳までは登山道のある一般ルートだ。途中、三ツ岩岳避難小屋を通ってひと登りで三ツ岩岳山頂へ。ここで一本取っていると昨夜会津駒ヶ岳の避難小屋(有人・有料)に泊まって縦走してきたというご夫婦がやって来る。会津朝日岳の避難小屋以来の他パーティーとの遭遇だ。この先は会津駒ヶ岳まで登山道が無いのだが、ずっと雪に覆われていて藪漕ぎは皆無との情報を得てメンバー全員ひと安心。もうこれ以上の藪漕ぎをする余力は我々には残っていないのだ。
 この先は情報通り快適な雪山歩きをこなして昼前には会津駒ヶ岳の山頂へ到着。ここからはもう人でいっぱい。さすが百名山だ。
やっぱり最後はこれですね!  あとは踏み跡だらけの下山路をさっさと下り、標高1,600mくらいで雪が消えると夏道に沿って下るだけ。国道との出合いがそのまま予約した民宿だ。ここで重荷から解放されて、あとは温泉→大宴会といつものコースへ。
 翌日は公共交通機関で飲みながら帰るだけというご褒美つきでこの山行も終了となる。

 昨年のGWに続いて今年も静寂の長期山行にどっぷりと浸かることが出来て大満足。同じ時間と同じ思いを共有出来たメンバーに今回も感謝!

〈コースタイム〉
【5月3日】 いわなの里(会津朝日岳登山口)(11:20) → 会津朝日岳避難小屋(17:20)
【5月4日】 小屋(4:30) → 会津朝日岳(5:30-5:50) → 大幽朝日岳(12:00~12:15) → 独標1,552m南方尾根上1,530m地点(幕)(17:00)
【5月5日】 幕場(4:50) → 丸山岳(6:50~7:20) → 坪入山(16:00-16:20) → 坪入山南東尾根上1,680m地点(独標1,612m手前・幕)(16:30)
【5月6日】 幕場(4:10) → 三ツ岩岳(7:50~8:10) → 会津駒ヶ岳(11:30~12:00) → 檜枝岐・滝沢登山口(15:00)

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