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岩稜縦走・北穂池~北穂高岳
梅田 尚子

山行日 2023年9月16日~18日
メンバー (L)梅田、萩原、小芝(麻)

 数年前、涸沢で仲良くなった人におすすめされた北穂池。せっかくだから、穂高の他の池もつないでしまおうと北穂池と奥又白池を巡る欲張った計画を立ててみた。

【9月16日】
カラカラの本谷橋  上高地から通い慣れた道を歩く。この平凡な道の中で、唯一の楽しみの徳沢のコーヒーソフト。コーヒーソフトを口に含んで幸せ気分でいると、そこには目を疑う看板があった。
 「涸沢には現在水がありません。徳沢または横尾で充分な水をお持ちの上お越しください」
 え?あの涸沢に水がない??どういうこと???どうやら、最近雨が降っていないのと、寡雪により雪渓がほとんど残っていないことが影響しているようだ。今回のルートでは、途中で水を補給しながら進む予定だったので、計画の根幹が一気に揺らぐ。ただ、横尾で水を汲めるだけ汲み、北穂と涸沢では販売はされているようなのでなんとかなるだろうと思い、気を取り直して出発。
 本谷橋に到着。その光景に愕然とした。水が少ないのではなく、水が流れていない。残念な気持ちもありつつ、こんな貴重な光景は今後見ることはないだろうと、カラカラの岩の上で一休み。ここで、ヘルメットやハーネスを装着しているパーティに声をかけると、私たちと同じく北穂池に行くという。北穂滝や北穂池の情報を聞くと、北穂池は干上がっており、北穂滝も水はないという。池巡りなのに池が見られないのか、、、と軽くショックを受けつつも行くしかないので先に進む。
やっと池が見えた!  それにしても暑い。岩からの照り返しの熱がきつい。さらに、本来ならできるはずの水浴びもできない。暑さにやられながら、本谷橋で声をかけた先行パーティを途中で追い越し、無心でガレを登っていく。
 ふと振り返ると、涸沢に行く道中の青ガレが見えた。こうやって見る青ガレは一見すごそうな場所に見える。こんな感じで、大した場所じゃなくてもSNSで映えたりするんだろうなぁとどうでもいいことを思った。
 横尾本谷左俣に入り、だいぶ上の方までくると、水が流れている音が聞こえる。枯れていると言われた北穂滝だった。細くはなっているが、水はとれた。こんな水不足でも北穂滝の水は枯れないことを確認。と同時に、横尾からがんばって担いだのに~という賭けが外れた気持ちになった。
 北穂滝から二俣に分かれており、そこを左側に進むと、沢の源頭部に差し掛かる。この辺で左手の尾根を乗り越える必要があるが、藪になっており、薄そうなところで適当につっこむ。もうほぼ終わりかと思っていたら、疲労もあったのか、ここからがなかなか大変だった。ひょっとしたら、もう少し上の方から巻けば藪を少し避けられたのかもしれない。ちょっと苦労してガレと薮を2,3回繰り返し、ぱっと急に開けたら北穂池が見えた。池は濁っていたが干上がってはおらず、またもや偽情報をつかまされていた。
 ちょうど2人パーティが一番手前の池の傍に幕を張っているところだった。本谷橋での情報では全部で4パーティとのことだったが、北穂池にたどり着けたのは先行の2人パーティと自分たちだけだった。
 先行パーティの幕場から一段上の場所に幕を張る。銀マ不要なくらいのふっかふかな快適幕場だった。長丁場だったことと、水を担いで当初の想定よりも大変になったこともあり、ようやくゆっくりできて安心した。すぐ近くには大混雑の涸沢があるなんて想像できない、とても静かな穂高だった。

【9月17日】
 今日は登って下りて、登って下りての長丁場。日の出とともに出発する。
 あまり人が入っていないため元々崩れやすくなっている足場なのに、さらに昨晩の雨で岩がすべるところもあり、朝イチからいきなり目を覚まされる道だ。
 藪を掴みつつ強引に左側の尾根にあがってそのまま尾根をあがっていく。足場が崩れるので藪の際に行くと危ない箇所もあり、藪の際と藪の中を行ったり来たりしながら進む。
 しばらくして左のルンゼを渡ってさらに左の尾根を越える必要があるが、ここは尾根上で木がピンポイントで薄くなっているところをねらうのが良い。尾根をそのまま上にあがりすぎたマキさんは復帰が大変そうだった。
 ルンゼを登ってからは数分程度すると東稜へつながる箇所があった。よく見ると岩にマークがあったが、めちゃくちゃわかりづらい。そして、ここからまたガレガレの岩をちょっと登ったところでようやく東稜に合流。合流地点にはケルンがあった。東稜から下山して北穂池に下りる場合は、このガレガレを下りると思うと、めちゃくちゃ大変だろうと思う。記録では、たまに北穂高→北穂池の記録見るが、みんなよく行けるな。。。と感心した。
 東稜に合流してからは快適そのもので、遅れていた時間の巻き返しを図る。これはなんとか奥又白に行けるかも?と、一筋の希望の光が見えてきた。
快適!  ところが、そこは人気のバリルート。東稜は何パーティも入っており、ゴジラの背で大渋滞が起きており、ここで1時間程度待つことになる。
 私は過去にリードしたことがあるから、マキさんに行ってもらう。数年ぶりのゴジラの背はめちゃくちゃ簡単で、はっきり言ってロープを出していない北穂池から東稜に上がるまでの方がよっぽど難しかった。
 そうこうして東稜から北穂高小屋に到着し、レモネードを注文。さくっとレモネードを飲んで出発しようと思ったら、ここでなんとレモネードが小1時時間かかってしまう。まさかのレモネード渋滞にはばまれ、この時点で奥又白に行くのは完全に諦めて、今日は横尾か徳沢までおりることにする。
 ここからは何もなくだらだら降りるだけだ、と思いきや、ここでもそうもいかなかった。南稜を下山中、ハギーに「先に行って」と言われ、マキさんと2人で涸沢ヒュッテまで降りて待っていたが、ハギーが一向に降りてこない。結局2時間涸沢で待っていたが、ハギーはテン場を突っ切って横尾へ行く道から一人で降りていた。
 パーティが見えなくなるまで間隔をあけるのはそもそもだめだということ、仮に先に行くことになった場合はどこで待つかは言うべきだということ、阿吽の呼吸など存在しないことを改めて学んだ。
 結局ヘッデンで横尾に到着して、非常に長い一日が終わった。
 反省点は色々あるが、上述したこと以外であげると、もっと軽量化していけば良かったと思った。水を担ぐことになったこともあいまって、北穂池周辺は想定していたよりも大変な道だった。

【おわりに】
 今回は北穂池だけで終わってしまったが、別の機会で奥又白池と天狗池は行ってみたい。池巡りにお付き合いいただける方、募集します!

〈コースタイム〉
【9月16日】 上高地(6:00) → 本谷橋(10:40~11:00) → 北穂池(16:40)
【9月17日】 北穂池(5:00) → 東稜合流地点(8:15~8:30) → 北穂高小屋(11:10~12:30) → 涸沢(14:30~16:30) → 横尾(18:30)

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