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沢登り・袖沢御神楽沢
永岡 恵二

山行日 2023年8月4日~6日
メンバー (L)永岡、清水

 以前から行ってみたかった御神楽沢を計画したところ、三峰熟女CAT'S・EYEの3人組からの挑戦状が届いた。ハーレム状態とウキウキしていたが、出発当日の夕方、まさかの2名が急遽キャンセルとなり、ひとりぼっちのCAT'S・EYEを羽生駅でピックアップ。へつりのミー子と仮眠場所の檜枝岐に着いたのは2時近かった。

【8月4日】
出発前の元気なミーコ  5時起床。すぐに下山口の駒ヶ岳登山口の駐車場に自転車をデポし、三岩岳登山口に移動し、朝食を取りながら、準備に取りかかった。登山口にはハイエースが停まっていたので、先行パーティーがいるようだった。
 6時過ぎに出発。登り始め早々に急登だ。バテると後が辛いので、極力スローペースで登る。徐々に気温も上がってきた。暑さ対策でペットボトルの水を凍らせてきたのは正解だった。休憩の度に氷水で喉を潤す。順調に高度をあげ、10時過ぎに小屋に到着。予定通りだ。
 ここから下降ポイントのコルを目指す。下降ポイントは開けた湿原に木道があり、気持ちのよいところだ。沢装備を着けて、コンパスを合わせて、藪に突入。すぐに沢地形になり、水も出てきた。氷水は既になくなっていたので、これで安心である。アブに攻撃されながら、上の二股に15時過ぎに到着。暑さでバテ気味だったので、今日はここまでとした。一休みして、アブ避けのためネットを被りながら薪を集めていたら、熱中症になってしまい、ダウン。暑さによる疲労と寝不足で、酒はほどほどに就寝。が、蚊が鬱陶しく、なかなか寝付けなかった。

【8月5日】
 4時起床6時出発。昨日の疲れはない。
 懸垂箇所が2か所ほどあり少し時間がかかったが、御神楽沢の出合いに9時半に到着。いよいよ御神楽沢の遡行だ。遡行してすぐに岩が足跡で濡れていた。先行者はそれ程離れていないようだと思ったら、100m位先にいた。
 岩畳に着くと先行パーティー3人組は朝食を取っていた。軽く挨拶して写真だけ撮って先に進んだ。

2日目出発前の元気なミーコまだ余裕があるミーコ

 ハイライトのスラブ滝2段10mに到着。スラブは乾いており、フリクションも効くので全く問題ないが、最後の直登部分が荷物を持って登るには狭く、空身になって取りつくが、高度感があって怖い。落ち着こうと一度岩から離れたら、ミー子が空身なら登れそうと、さすがはへつりのミー子、岩に取りついてさっさと登ってしまった。登ってしまったら、ミーコにザックは引き上げてもらうしかないのだが、その意識はなかったようだ。自分のザックには酒1升、ビールにロープ等重たく、か弱いミーコには引き上げるにはかなり大変だったようだ。無事にザックを引き上げて、自分も登ると、滝下に先程の3人組が我々を見ていた。草つきのトラバースを経て滝上に降り、遡行を始めると、突然、頭の上から雷鳴が響いた。見上げると北側の空に黒い雲。早く幕場に行かねばと先を急ぐが、すぐにパラパラと雨粒が落ちてきた。急ぎ足といっても、50代の我々のスピードは上がらない。両岸が切り立った地形になり、雨粒も大粒になり始めた頃、行く手に滝が現れた。平水なら泳ぐか左をへつって滝下まで行って水流を登れそうだが、雨がドンドン強まって水流が強くなってきている。自分が突破しても後のミー子の時はどうなるか。では、高巻くか?と左の斜面を見るが急な泥付きで厳しそう。高巻けたとしても先にビバークポイントがあるのか・・・。時計を見ると15時。ここは諦めてビバークする事にした。しかし、切り立った谷でタープを張れるような高台はなく、滝の少し手前にあった大岩が若干平らだったので、ここでビバークする事にした。すると、先程の3人組が追いついて来た。この先に越えられない滝があることを伝えて、ミー子を置いて彼らと一緒に滝の様子を見に行った。

ミーコの元に戻ってきた激流  3人は滝を見て、これは無理と、若いふたりが躊躇なく左の泥壁に取りついた。案の定上の方で苦労している。と思って、滝に目をやると激流になっているではないか。ビバークポイントの方を見ると、ここまで歩いてきた岩が殆ど激流の中に沈みかかっている状態。これはヤバイと急いで微かに見えている岩の上を飛んで戻るが、対岸に渡る最後の箇所は激流を徒渉するしかない。悩んでいればますます水量は増える。思いきって腰を低くして突っ込むと、あっという間に激流に飲み込まれてしまった。しかし、運のよいことに、3~4mのところの岩に引っ掛かって起き上がれ、無事に対岸に渡れた。しかし、ミー子の待つビバークポイントはまだ先だ。あと5mのところまで何とか戻れたが、そこからは急な左岸をへつって行くしかない。落ちたらあっという間に激流に飲み込まれてしまう。左の壁を暫く見ていると、3m程進めれば、落ちても素早くもがけば浅瀬に手が届き激流から逃れられそうだった。決死のヘツリ開始。岩にはこけと泥。靴底で壁を擦り、滑らない事を確認しながら慎重に歩を進める。2mほど進むと、壁はさらに切り立ち、ちょっとしたバランスの崩れで激流に落ちてしまう状況。ミー子を残して激流に・・・。いや、そんなことは出来ないと強く思い、手の平と靴底のフリクションを信じ、右足を一歩出す。腰を低くして体重を徐々に右足に乗せていく。フリクションは効いているようだ。完全に右足に体重が乗り、次は左足。ゆっくり体重移動し左足に体重が乗り、あと1m。その先に微かに傾斜が緩んでいるところを見つけた。ゆっくり右足を乗せ、体重移動し、ミー子の待つ浅瀬にジャンプ。何とかビバークポイントに戻ることが出来た。
 雨はますます激しくなり、寒さに慣れているミーコも震えていた。ビバークポイントにタープを張って落ち着くと、やっと、昨晩オープンできなかった熟女パブCAT'S・EYEがオープン。
 本来なら3人いるはずの熟女が、長女ひとりぼっち。だが、その分、ディープな夜となったのだった・・・。

熟女パブCAT'S・EYEオープン

【8月6日】
ちょっと疲れてきたミーコ  3時起き5時出発。水は薄濁りだが、水量は平水に近くなっていた。朝から泳ぐのはつらいので、左の泥壁を登ることにした。昨日先行パーティーが泥壁にロープを垂らしていたので、それを使わせてもらった。上部の狭いスペースで彼らはビバークしていた。まだパッキングもしていなかったので、先に彼らのビバークポイントから懸垂で降りて、同じロープで彼らも降りてもらった。ロープを片付けながら、3人パーティーには先に進んでもらったが、すぐに彼らは釣り&朝食タイムとなり、追い着いてしまった。小さいのが1匹釣れたようだった。足の遅い我々は釣りをしている余裕はないので先に進む。
 ムジナクボ沢出合いにようやく到着。既に10時20分。その後遡行を続けるが、休憩のたびに3人パーティーに抜きつ抜かされの状況だった。ロープを出すポイントでは準備が整うと、ちょうど後続が来るというローテーションとなり、ロープを共用することで、効率的に遡行が出来た。
 沢は源頭部に入り、明るいうちに山頂までは行けそうという目処がたち、一安心。ブヨの攻撃はさらに増してきた。16時45分に最後の根曲がりの藪に到着。山頂にコンパスをあわせて突入。山頂手前で右側に方向を変え進むと、山頂右側の草むらに出た。時間は17時15分。沢靴から登山靴に履き替えていると、3人パーティーも同じところに出てきた。お互い溯行の無事を称えて、記念撮影。

無事に遡行終了!

 山頂経由で下山開始。GWの時は真っ白だった山頂付近は緑の草原で全く違う景色だ。スキーシーズンの雪面をイメージしてこの斜面はどうのこうのと、緊張感のない話をしながら下山。コースタイム2時間半のところ4時間かけて、21時に下山。
 真っ暗の中ミーコを残して、デポした自転車で入山場所の車の回収に戻り、ミーコのいる下山口に戻り、帰路に着いた。

〈コースタイム〉
【8月4日】 三岩岳登山口(6:20) → 避難小屋(10:20) → コル(10:50) → 上の二俣(幕場)(15:30)
【8月5日】 幕場(6:00) → 御神楽沢出合(9:30) → 石畳(11:50) → ビバークポイント(15:30)
【8月6日】 ビバークポイント(5:20) → ムジナクボ出合(10:20) → 源頭部(16:45) → 山頂直下の草原(17:15) → 下山口(21:00)

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