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岩登り・瑞牆山小面岩 一刀
西村 宏一

山行日 2023年9月26日
メンバー (L)西村、眞鶴(哲)

 一刀を登るにあたりオンサイトをしたいと思っていた。ただ11bというグレードに日和っていたが、春にトラッドの12台を登れたこと、眞鶴という幸せ一杯のパートナーが一緒に登ってくれるとの事でチャレンジする事が出来た。
 アプローチはチップの駐車場から。ここからカンマンボロンや大面岩を経由して取付きに向かうのだが、この周辺の岩場には行ったことが無いため、多少の不安はあったが瑞牆本の写真入りの案内により急登まじりの旧登山道を歩き小一時間で到着。いやはや、ギアを持っての急登は50歳には応えた。
 そそくさと栄養補給にキジを済ませていざクライムオン。

取付きから1ピッチ目  1P(5.9)西村リード。下部はスタンスもあり簡単だが上部の数mはしっかりとしたワイド技術が必要。チキンウィングで膝をロックして這い上がる、朝一で息がきれた。終了点は立ち木。
 2P(11a)眞鶴リード。少し怖いトラバース後にシンハンドの綺麗なクラックを登る。途中スタンスの置き方に迷うところがありそこが核心では無いかと思う。
 3P(4th?)ほぼ歩き、次のピッチの支点はカムで取る。
 4P(11b)西村リード。一応このルートの核心ピッチ。ここをやりたくてここまで来たといっても過言ではない。出だしの薄被りのシンハンドがストレイニュアスで核心。そこを越えるとフィンガーのトラバースをこなして最後にハング越え。このハング越えはハンドジャムがバチ効きで豪快に越えることが出来る。パンプしたが、レストが出来るところもあり、目標としていたオンサイトが出来て感無量。

核心となる4ピッチ目  5P ほぼ歩き
 6P(5.8)西村リード。チムニー。右壁にカムが決められるとの情報だったが見つけられなかった。まあ落ちる気はしないのでそのままノープロでチョックストーンを越える。その後右にトラバースとの事だったが、ロープの流れが悪くなったのでトラバース前でピッチを切った。
 7P ほぼ歩き。
 8P(11a)眞鶴リード。ハンドの効くトラバースから2,3手のバランシーな気持ち悪いムーブをこなす。カムが足元のため滅法怖い。自分はフォローであったがそれでもムーブを起こすのに暫く躊躇した。ここをリードした眞鶴は流石の強靭なメンタル。

最終ピッチ  最終ピッチをこなすとそこは小面岩のてっぺん。瑞牆本峰や奥壁から正面壁などが一望できる。本峰直下にある帝王(ワイドの12A!初登は船山さん)も良く見えた。

終了点から瑞牆本峰を望む  相方の眞鶴と互いの健闘を讃えていると小雨が降ってきた。登攀がもう少し遅れていたら途中敗退であったかもしれない。握手を交わし早々に下山開始。終了点からケルンに導かれて懸垂の支点がある。そこから2回の懸垂で小面新道へ降りる事ができ、10分弱で取付きへ戻ることが出来た。
 一刀はオールナチュプロ、そしてグランドアップで築かれたルートである。
 ちなみにオールナチュプロとはいわゆるボルトやハーケンを一切使わないで登るにあたり残置物を一切残さないこと、グランドアップとは上から回り込んでトップロープなどで試登などをせずに、地面から登りながら開拓されたルートのこと。それがいかに困難で技術だけでなく冒険心と恐怖を克服する強い精神力が無いと達成できないことは想像に難くない。
 山岳マルチでもなんでも、そのルートがどんな人によってどのように開拓されたかに思いを馳せ、その人に感謝と畏敬の念を込めながら登るのも良いかなっと思う西村でした。
 そして新婚でしかも赤ちゃんが出来た幸せ一杯のなか、付き合ってくれた眞鶴にも多謝。

〈コースタイム〉
取付(8;30) → 登攀開始(9:30) → 終了点(14:00) → 取付(15:00)


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