山行日 2023年11月11日~12
メンバー (L)鈴木(一)、梅田
塩見岳は南アルプスのへそと呼ばれているそうだ。地図を見れば納得。南北方向のほぼ中間地点にそびえる孤峰だ。いつか雪の山頂に立ちたいと思ったのはいつだろうか。その前哨戦として、冬の訪れを目前に控えた11月に本企画を提出した。
いざ迎えた山行日。メンバーは2人のみの小世帯となった。決行直前まで、行程について悩んでいた。というのも、三伏峠までは駐車場から3時間強で着いてしまう。かと言って標高2,700m超の塩見小屋まで水を担ぎ上げるのもシンドイし・・・とぐるぐる考えていたが、天気予報を見ると土曜日の晴れが優勢だ。ここはスピード勝負。前泊地とした「道の駅 歌舞伎の里大鹿」(ここはお薦めです!)での作戦会議で「三伏峠にテントをデポし、土曜日登頂」を決定。4時起きを約束して就寝した。
翌朝、アラームで目を覚まし、身支度を調える。時間節約のため、駐車スペースへ向かう車中で朝食を摂りながら向かう。曲がりくねった鳥倉林道を1時間弱ほど走って駐車スペースに到着。すでに10台弱の車が止まっており、真っ暗闇の中、今にも出発するパーティーもちらほら。皆、軽装だ。日帰りなのだろう。自分は冬装備の確認も兼ねて、ガソリンストーブなどでザックはパンパンだ。
手早く荷物を整理して、林道ゲートを抜けて出発。まずは登山口に向けての舗装路歩きだ。
夜明け前の林道は一面のガス。ヘッデンの灯りが乱反射して前が見にくい。なだらかな道を歩いているとだんだんと夜が明け、登山口の東屋が見えてきた。いよいよ山道の始まり。中程度の傾斜で一汗かくと小一時間で鞍部に到達。ここから三伏峠までは稜線を歩くことになる。
道はうまくピークを巻いて、緩やかに高度を稼いでいく。古来より歩かれている道らしく、いかに楽に速く峠へ到達するか考え抜かれた道筋だと感じた。途中、エアリアにも記載のある水場で1泊分の水(2人で5L+飲み水)を汲んで、三伏峠のテン場を目指す。傾斜を増す登山道を進み、駐車スペースから3時間強で三伏峠の標識を迎えた。
テント設営、その他の用事をこなして、塩見岳に向けて改めてスタート。ここからもなだらかな稜線歩きが続く。出発してすぐの三伏山ピークに着くと、あたりはすっかり晴れ渡って360度の大絶景が広がる。目指す塩見岳は大きく目の前にそびえるが、まだまだ遠い。
次の本谷山を目指す尾根は幅広く、テントを張るのに十分に可能なスペースがあちらこちらにある。「塩見小屋まであと40分」のメッセージから急に斜度が増す。這松の背が少しずつ低くなってくると、目の前に塩見小屋が現れ、その向こうに山頂直下の岩場が堂々とした姿を現した。山の大きさにスケール感が狂ってしまったのか、見た目にはそれほど遠く感じなかった。30分もあれば着くのでは?と思っていたが、そんなに甘くはない。小屋から見えていた偽ピークに立つと、その向こうに本当のピークが偉容を構えている。あとひと息。鎖場を一歩ずつ登り、まずは西峰、そして東峰に到達した。
南アルプスのど真ん中から全周の山々を見渡すと、長い道のりの疲れも吹き飛ぶ。甲斐駒、仙丈、北岳、間ノ岳・・・、南には聖岳や光岳が見える。次は雪を見に来よう。そう決めて下山の途に就く。来た道を引き返すだけなのだが、なだらかな道の単調さがかえって疲れを増幅する。いい加減うんざりしてきた頃、本谷山ピークに到着した。
振り返ると夕陽に染まる塩見が大きな山容を見せている。目の前には三伏峠小屋もあとひと息の距離。ゴール目前の三伏山では見渡す限りの雲海と夕焼けのご褒美。テント場に戻ると見慣れた緑の我が家が出迎えてくれた。
今シーズン初のガソリンストーブ点火に手こずるトラブルはあったが、二度目のチャレンジで炎が安定すれば、テントは暖かいリビングに早変わり。いつも通り他愛もない話をしながらの夕食、翌日に頑張らなくてもいいという幸せな時間を楽しみ、シュラフに潜り込んだ。
日の出まで惰眠を貪った後、テントの外を見ると一面のガス。やはり初日に登頂したのは正解だった。のんびり朝食を片付け、テント場を後にしたのは8時半少し前。あとは車を目指して淡々と進むだけだ。2時間少しで林道に下り立つと、黄色く色づくコメツガを眺めながら山行の余韻に浸る。やはり次は雪の時期だ。そんな思いを強くした。
【11月11日】 | 林道ゲート(無雪期)(5:45) → 登山口(6:30) → 水場(7:55) → 三伏峠(8:55~9:40) → 本谷山(10:30) → 塩見小屋(11:40) → 塩見岳(13:00) → 塩見小屋(14:00~14:15) → 本谷山(15:40) → 三伏峠小屋(幕)(16:40) |
【11月121日】 | 三伏峠小屋(8:20) → 登山口(10:25) → 林道ゲート(無雪期)(11:20) |