山行日 2024年3月20日~24日
メンバー (L)荻原、永岡、斎藤(吉)、清水、鈴木(一)、川口(修)、大瀧
(プロローグ)
はじまりは大学4年生の夏だった。私の双子の片割れが夏休みにリーダーとして知床連山(羅臼岳から知床岬)に藪漕ぎで行ってきたと言う。踏破するのに確か9日間かかったと言っていたかな?世界遺産に登録される前から日本で最後の秘境と言われていたこの山域にどっぷり浸かった夏休み、9日間一度も地面を踏むことなく(ずっと這松の上に乗っかって歩行)行動し、最後に知床岬が見えた時に誰が何を言った訳でもないのにメンバー全員が岬に向かって次々に走り出したという話しを聞かされて大きな衝撃を受けた。私もいつかいつかと思いながら30余年・・・
月日が経つのは早いものですね。今回、三峰山岳会の90周年記念山行を利用させて頂き、30余年の思いを実行に移すべく、また50代の肉体でも達成可能な山行内容にアレンジして知床シリーズ三部作を企画させて頂きました。足掛け2年となるこの企画、前2回の山行は参加してくれたメンバーのおかげで予定通り完登することができた。そして今回は最終章となる知床岳スキー、ミッションは知床岳の山頂を踏むことだ。果たしてミッション達成=知床シリーズ完結と相成なるのか否や?
【3月20日】曇り終日強風
今日は実質移動日。女満別空港に9時に集合してレンタカーで羅臼の町へ。BC?となる旅館「まるや」でスキー他の荷物を受け取り、明日の偵察に向かう。雪は思ったより多くて相泊港からスキーで海岸線を歩いて行ける。ほどなくカモイウンベ川の渡渉地点に到着。ここの渡渉のためにメンバー全員に胴長(ウェダー)を用意して貰っていたのだが、渡渉点にはまだスノーブリッジが残っており、難なく渡れてしまう。渡渉後に急な崖状の斜面を這い上がり、緩やかな尾根に乗るところまで確認して、本日の偵察はおしまい。短い偵察だったが、胴長不要が確認出来たのは我々にとっては大きな成果だ。BC(まるや)に戻って前夜祭となる。
【3月21日】曇り時々雪、終日強風
(山は終日吹雪)
と、いうことで終日停滞。前夜祭は続く。
【3月22日】曇り時々晴れ、強風
今日はルート工作日。そうです、我々はただ毎日飲んでいる訳ではなくて極地法で着実に進んでいるのです?明日の本番シミュレーションが目的なので、3時に起床し4時にBC(まるや)を出発。シール張りなどの準備をして5時に出発。カモイウンベ川の第1渡渉点は二日前の偵察通りでなんなくスノーブリッジを通過、海岸線から山に入る急な崖状も2回目なので問題なく板でそのまま這い上がる。昨日降った新雪を交代しながらラッセルして明日への一歩に繋げていく。第2渡渉点の場所も特定し、標高650mからの急登セクションに達したところで、予定通り風が非常に強くなり視界も悪くなってきたので本日はここまでとする。ここからの滑走は前日の新雪がほどよく乗っていて厳冬期並みのパウダーランを楽しめた。帰りの滑降ラインで右往左往したが、これが翌日の大いなる助けとなった。今日は完璧なルート工作が出来たことから、本日もBCで前祝いとなる。
【3月23日】終日無風快晴
いよいよ今日はアタック日。我々はいまサウスコルにいるのです(注:あくまで気分の話です)。昨日のシミュレーション通りの時間で起床・準備・出発し、我々が昨日付けたトレースを辿って順調に高度を上げていく。トレースのおかげで昨日の最終到達点(標高650m)には1時間以上早く到達、ここでクトー(スキーアイゼン)を付けて急傾斜の登りにかかる。決して滑落は許されないところで滑落者2名を出してしまうが、雪が柔らかめだったので事なきを得る。その後は慎重を期してシートラ&ブーツアイゼンで登っていく。今年は雪が多いようで通常は這松の藪で苦しめられる箇所もほぼ埋まっており、順調に高度を稼いでいくと山頂手前に広がる広大な台地状の雪原(標高1,050m)に出て、眼前に広がる光景にメンバー一同息をのむ。長年雪山をやっている私でもなかなかお目にかかれない素晴らしい景色だ。
しばらく大雪原の雲上スノーハイクを楽しみ最後の200mほどの登りをこなすと外輪山らしきところに乗っかり、あとは知床岳山頂まで一投足のビクトリーロードだ。
山頂からの景色もこれまた素晴らしく南は国後島と羅臼側の流氷、北はウトロ側の接岸している流氷、東は知床岬、西は羅臼岳・硫黄岳の山塊が広がっている。この素晴らしいロケーションの中、メンバー全員でミッションを達成出来たことを素直に喜び合う。しばしの感動&写真タイムのあと、いよいよお楽しみの時間です!まずは山頂から大雪原に向けての滑降、その後も急傾斜の大バーン滑走、締めのツリーランを楽しむとあっという間の海岸線。相泊港までの海岸線歩きを一歩一歩噛みしめながら車まで戻って、知床岳スキーは大成功で幕を閉じる。
この後は斜里町に移動し、夜は宿で本祝い&「知床マエストロ正会員」の認定授与式と結構忙しい。そしていよいよ明日は最終日、我々強欲チームの面々は明日も3時起きで登頂を目指すのだ!
【3月24日】終日快晴
昨日の移動時、斜里町から見た真白く輝く海別岳。山容は大きく、百名山で有名な斜里岳と並んでその存在感は圧巻だった。この時期見るのは初めてで、最初の印象は「あんなとこ本当に登って滑れるの?」って感じだった。知床岳登頂で半分以上燃え尽きてしまった我々に余力はあるのか?でもあんなの見てしまったらやっぱり登りたい・・・
いろいろあって集まったのはおじさん5名のみと昨日から2名減ってしまったが、疲れた体に鞭を打って登山口へと向かう。登山口は観光地としても有名な「天に続く道」の撮影スポットから。本当はもう少し林道を進んだ独標194mから出発したかったのだが、前日の下見で駐車スペースが無かったのでここから出発とする。林道を30分弱歩くと漸く当初予定出発地の独標194m、ここから前日のトレースを辿って緩やかな樹林帯をえっちらおっちら。標高650mくらいから森林限界となり、見事な雪山の景色が眼前に広がる。そして振り返れば圧巻の流氷群だ。今日も昨日と同様の最高のロケーションの中、雪山ハイクを存分に楽しむ。雪の状態は良好でスキーアイゼンのみで問題なく登っていける。やがて偽ピークに到着、ここからは稜線を一投足で海別岳山頂だ!
昨日に続いてこの時期なかなか登頂出来ない山を二日連続で達成、体力や技術というよりはこれはひとえに天候の問題。「リーダーが持っている」と、いうことにしておこう!海別岳からの360度の展望を存分に楽しんだ後はお楽しみの滑降タイムだ。当初は雪崩も怖いし、登って来た尾根ルートを忠実に辿って帰る予定であったが、山頂で会った地元風の慣れた感じの単独スキーヤーが山頂直下の十二線川源頭を一気にかっ飛ばして滑っていくではないか!これで帰りのルーファイが必要無くなったのと雪崩も大丈夫そうなことが確認出来たので我々もこの素晴らしいルートをトレースさせて頂くこととする。源頭上部は雪が硬く結構太ももにくる感じだが、1本滑るとあとは柔らかい雪が沢底に溜まっていて滑りやすい。
トレースを辿ってどこまでも沢沿いに下っていき、やがて林道沿いに出て独標194mに無事戻ることが出来た。トレース・バンザイ!?こうして海別岳スキーも最高の形で無事に終了、女満別空港で最後の打上げ、解散となった。
知床シリーズ・プロジェクトは私一人ではとても出来るものではありませんでした。全てに参加してくれたメンバー3名はもちろん1回でも参加してくれたメンバー全員にこの場を借りて改めてお礼申し上げます。ありがとうございました!
【3月23日】 | 相泊(5:00) → 知床岳(11:50~12:30) → 相泊(14:30) |
【3月24日】 | 天に続く道(5:10) → 海別岳(10:10~10:30) → 天に続く道(12:40) |