トップページ > 岩つばめ一覧 > 岩つばめ374号目次

沢登り・神子内川手焼沢~長手沢周回
朴 明玉

山行日 2024年6月22日~23日
メンバー (L)小芝(泰)、鈴木(一)、大瀧、佐藤(功)、甘川、朴

 手焼沢を遡行し、長手沢を下行する今回の周回ルートは、グレーディング1級の初心者向けの沢です。三峰入会後の初心者が初めての沢を安全に経験できるよう、リーダーが企画して下さいました。
 日光の中禅寺湖の東南に位置する沢です。観光地が近い割に、驚くほど人の少ない沢です。
 参加した初心者は、今回が沢2回目となる私、沢は3回目で泊まり沢は初めての甘川さんです。

スタート直後に登場する地蔵滝は捲きました。  その後、大きな岩がゴロゴロする沢を歩き、石積堰堤や小滝を難なく乗り越えます。7mの滝が登場しましたが、捲いて行きます。高く捲く間の、トラバースの土の急斜面で、泥にフェルト靴を滑らせそうで、やや緊張しながら歩きます。
 最も経験の少ない私の歩き方を観察していたリーダーが、そろそろ良かろうと言うことで、捲きは控えめにして水芯を歩くことへスイッチしました。
 早速、小滝の流れに突っ込んで行きます。
 滝登りは初めてですが、水流の激しい所に、ちょうど手足が置けそうな、信頼感のあるガバが意外に多いことに驚きながら、見よう見まねでリーダーの背後を追います。ガバが多いのは、激しい水流で削れたせいなのでしょうか。
 2連滝で、上段は鈍角な傾斜の苔むした滝で、身長160㎝の私には丁度良い足場がありませんでした。クライミングシューズならばグリップしそうな、つま先だけ引っ掛かりそうな所だけ見つけることができました。
 フェルト靴の性能がまだよくわかっておらず、行けるかどうか不安を抱えながらも足をかけてみたところ、滑って2mほど落下しました。
 スローモーションのように、「あー、やっちゃったー、ちゃんと着地しないと体を打ったりしてマズいなー。」と考えを巡らせていました。幸い、華麗な着地こそ出来なかったものの、ケガすることはありませんでした。
 教訓として、フェルト靴は岩場の急斜面でグリップしないことを学びました。足場は足先が平に突っ込める場所を探した方が良さそうです。
 時を同じくして、下段の滝では、佐藤さんが同じく足を滑らせていたそうです。
 2人同時に滑ったことに、間を歩いていた方達は驚いたそうです。
 佐藤さんも幸いケガはありませんでした。
 リーダーがロープを出してくれ、アッセンダーの使い方を学びながら、安全第一で登りました。
男体山と中禅寺湖を臨む展望台で全員集合写真  本日二度目の二又分岐を過ぎて、5m、6m、3mと滝が続きます。
 滑った実績があることから、ぬめりが多い、少しいやらしい滝では、万一のためにリーダーがロープを出してくれました。
 「始めたばかりの沢登りで怪我したら面白くないでしょ」と神のような優しいリーダーです。
 ロープが見えているというだけで心理的安心感が増し、落ち着いてルートを見つけることができました。
 やがて沢を登り詰めて、廃棄ドラム缶が転がるゴーロの涸れ沢の終点に達し、藪漕ぎなしで遊歩道に到達しました。遊歩道は、半月山と茶ノ木平を繋ぐ道です。
 5分ほどで清々しいウッドデッキの広がる、茶ノ木平遊歩道入口展望台へ出ました。目の前に男体山、日光白根山、中禅寺湖の大展望が広がります。
 気持ちの良いこの場所で大休止を取り、行動食を食べたり、はたまたデッキに寝転がって昼寝したり、まったりとした時間を過ごしました。
イワナが釣れて満面の笑みを浮かべる鈴木さん  すっかりリラックスして元気を充電した後は、長手沢へと進みます。
 尾根から笹の急斜面を下って、涸れ沢に入りました。
 大きな枯滝を、高捲いてトラバースします。ここでもリーダーがロープを張ってくれ、土とボロボロと落石する岩の急斜面を安心して通過することができました。
 ボロボロの岩と苔だらけの涸れ沢がしばらく続いた後、やっと水流が出て来て歩きやすくなりました。
 傾斜も徐々に緩んで行き、沢幅も広がって、どんどん歩きやすくなってきます。
 沢を遡下行して沢の始まりと終わりを見たことで、これまで漠然としていた沢地形への理解が深まった気がします。
 今夜から明日にかけて、大雨予報が出ていることから、予定変更して途中で林道にエスケープするかどうか、リーダーが思案していました。
 結局、予定通り、長手沢沿い1,170mの幕場でタープを張りました。
 焚火を起こす間、男性陣はテンカラに励みます。小さいイワナが入れ食い状態だったそうですが、釣果として持って帰ってきたのは、鈴木さんの20㎝級1匹だけでした。このイワナは遠火で大事に塩焼きとして育てられ、全員で少しずつ分け合って味わいました。身が締まってとても美味しかったです。
焚火とジンギスカンを囲んでワイワイ過ごしました  焚火とジンギスカンを囲んでおしゃべりが弾む中、夜は更けていきます。
 やがて予報通り小雨が降り始め、散会となって就寝しました。
 寝ている間、時折強雨がタープを打ちましたが、私は濡れることはありませんでした。
 一方、小枝ペグが外れてタープがはためいた所にいた方は、足元が水溜りとなったようです。

 翌朝、雨の中、タープの下で朝食を取りながら、本日の予定を話し合います。
 林道へエスケープすることが決まりました。  幕場対岸の斜面を20mほど登ると、あっという間に幅2mほどの林道に出ました。
 前日は4時間かけて遡行したルートが、林道だと2時間足らずでした。
 車も通らないので、皆で横に並んでワイワイおしゃべりしながらゆっくり下りました。
 途中、よさげな急傾斜で、リーダーが私に懸垂下降を教えて下さいました。
 懸垂下降は、複数の例会で参加の前提条件になっている一方、初心者が個人で習得するにはハードルが高い技術のため、教えてもらうことができて本当に嬉しかったです。

 最後に、今回のルートは、参加した他の皆さんにとっては簡単な沢だったそうです。私には、少しだけチャレンジングな、ちょうど良いレベルでした。  雨のタープ泊も、恐れていたほどひどいものではありませんでした。何より、楽しみにしていた焚火の間、雨に降られなかったことは幸いでした。

遡行記録&遡行図

ルート補足:魚影あり(小さい個体ばかり)、釣り師1組2名、放射性物質が原因の一帯の禁漁は解除済

〈コースタイム〉
【6月22日】 東京駅前(6:30~6:50) → 【車・東北道経由】 → 日足トンネル出口(9:47) → 地蔵滝(9:55) → 茶ノ木平遊歩道入口バス停(13:52) → 茶ノ木平遊歩道入口展望台(13:56~14:21) → 標高1,170m付近幕場(16:13)
【6月23日】 幕場(8:23) → 日足トンネル出口(10:21)

トップページ > 岩つばめ一覧 > 岩つばめ374号目次