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山スキー・薬師岳
永岡 恵二

山行日 2024年5月3日~6日
メンバー (L)永岡、荻原、清水、鈴木(一)、川口(修)、大瀧

 2013年、怪我で動けなかった時、山スキーメンバーがGWに薬師岳にスキーに行った話を聞いて、自分も行ってみたいと思いつつ、なかなか実現出来なかった。今回やっとメンバーも揃い、実現することができた。

【5月3日(金) 不安の出発】
全く雪が見えない飛越トンネルからスタート!  例年だとゲートから飛越トンネルまで歩かなくてはならない。しかも今年は雪が少なくシール歩行は望めないので、初日からハードになることを覚悟していたが、なんと前日に道路が開通し飛越トンネル迄、車で行くことができた。ここまでの道中でわかっていたことだが、飛越トンネル入り口の駐車場から見る山肌には雪は全くなく、本当にスキーが出来るのか不安になった。
 板とブーツをつけて、ザックを担ぐと、あまりの重さで、これで登っていくのかと思うと、オジさん、オバさんたちは更に不安になった。上には雪があると信じて、登山口に入って行った。1,600m位になるとようやく雪が現れ、1,660mのコルで自分以外のメンバーが登山靴をデポし、自分は1842の神岡新道との分岐に登山靴をデポし、ようやくシール歩行となった。雪が少なく密林の歩行なので、快適ではなかった。本日の幕場、北ノ俣避難小屋に到着すると、既に先客が3人入って満室状態。我々はテント泊になった。

雪が少ない神岡新道を眺めながらテント泊

【5月4日(土)灼熱の薬師岳】
北ノ俣の分岐から槍ヶ岳が見え思わず槍ヶ岳ポーズ  小屋から見る神岡新道はなんとか雪が着いている程度。朝早く斜面はカリカリのアイスバーンの為、アイゼンで雪の着いているところを選んで登り、途中からシール歩行に切り替えた。あと少しで北ノ俣の分岐というところでツボ足のトレースを追ってしまい、登山道に入ってしまった。登山道は雪がなく、汗だく、ヘロヘロになって北ノ俣の分岐に到着。オギ&スーはうまい具合に雪のあるところを進み、大分前に北ノ俣の分岐に到着したようだった。帰りはオギ&スールートで小屋までは滑れそうだ。
 稜線から太郎山手前まで滑り、小屋に到着。女性2人は神岡新道の登りで疲れたので明日のメインイベントの為、小屋で休養し、おじさんたちは小屋に荷物を置いて、早々に中央カールに向けて出発。快晴で真夏のような暑さである。暑さに弱い自分はヘロヘロになり、薬師平で離脱。残り3人は山頂を目指し、自分は薬師岳山荘迄とし、そこから、鳶谷に滑って、少し登り返してトラバースして薬師平に滑り込んで小屋に戻った。暑さに弱い川口さんは避難小屋迄。オギ&スーは山頂迄行って金作カールと中央カールのエントリーポイントを確認して、避難小屋から鳶谷の上部を滑って小屋に戻ってきた。ちょうど17時。

【5月5日(日) カール大滑降。そして・・・カールの中心で〇×を叫ぶ】
薬師岳山頂!  山頂の雪が緩むであろう11時に到着するように遅めのスタート。風が強かった。途中、薬師岳山荘で大休止を取って、予定通り11時に山頂到着。オートルート以来の薬師岳山頂だ。あの時は、夕暮れギリギリでのんびりできなかった。今回は時間に余裕があるので、登頂の喜びをゆっくり味わえると思ったが、記念撮影して、すぐに前のめりサブリーダーオギが金作カールのエントリーポイントの少し先のコルに集合と指示を出し、皆が滑降準備を始めた。
 自分はノンビリ準備して、指定のコルに行くと、全員の集合を待っていられない前のめりオギが金作カールを滑り降りていた。あれっ、集合するんじゃなかったっけ???後続も続々と滑り降りていった。金作カールは急斜面と聞いていたが、快適な斜面だった。カールの中心まで滑り、全員集まって、歓喜の声をあげた。登り返しはシートラーゲンで、東南尾根方面。

金作カールに吸い込まれていく!見えるかな?皆のシュプール

中央カールで喜びを叫ぶ!  次は中央カール。前のめりサブリーダーのオギちゃんが当然トップを滑り出すかと思ったら、なんとトップを譲ってくれた。山頂から避難小屋方向に少し戻ったところからエントリーするが、稜線から直下は見えない。エントリーポイントに少し滑り降りると、直下から右側にクラックが走っていたので、後続に状況だけ伝えて、ドロップイン!先ほどの金作カールよりも巨大なカールに自分だけのシュプールを描く。最高だ!歓喜の声をあげながらカールの中心に向け滑り降りて行った。カールの中心に着いて、振り返ると次々に歓喜の声をあげながら、後続メンバーが滑り降りてきた。カールの中心に皆集まると、中央カールのスケールの大きさに皆興奮気味だった。
 中央カールの中心から、上を見渡すと、ほぼ雪庇に囲まれていたが、唯一崩れた雪庇の左側に尾根に上がれそうなポイントがあり、登り返しはそこに決定。シール歩行でそのポイントまで向かうが、高度に弱い自分は皆に着いて行けず、一人遅れていった。尾根にあがる直前に今にも崩れそうな巨大な雪庇があった。皆はオギサブリーダーの指示で、雪庇手前で息を整えて、一気に通過。高度障害の自分はひとりのんびり通過。尾根に上がると、皆、自分を心配して待っているかと思ったら、誰もおらず、先に進んでいた。薄情なメンバーである・・・。
 避難小屋付近で大休止。戻りのルートは薬師岳山荘へトラバースし、昨日自分が薬師平に向けて滑ったルート。しかし、自分は昨日オギ達が滑ったという避難小屋から鳶谷への斜面が気になる。ミーコも気になっている様子だ。そこでミー子とふたり、皆と別れ、誰もいない鳶谷にふたりの〇×のシュプールを描くことにした。鳶谷は程よい斜度で滑りやすく、二人で歓喜の声のハーモニー(濁音あり)を奏でながら、滑り降りて行った。戻りは、昨日のルートの予定だったが、登り返しが足りず、他のメンバーのトレースを追って少しアルバイトしてしまった。小屋に到着すると雷鳥がお出迎えしてくれた。

先を行くメンバー雷鳥のお出迎え

【5月6日(月) 下山、そして、富山の繁華街で〇×を叫ぶ】
 予定は7日下山だったが、昨晩から天候は下り坂なので、1日早めて下山することにした。外は強風だ。北ノ俣の分岐迄シールで戻り、行きにオギ&スーがシールで上がってきたルートを滑り降りる予定。行きは藪がなかったそうだが、この2日間の暑さで藪が出て、何ヵ所か藪の上を板で歩く羽目に。とは言え、下りのスキーは坪足とは違い、楽チン。北ノ俣避難小屋の下まで滑って振り返ると、行きも雪が少ないと思ったが、更に少なくなっており、全く違った景色になっていた。このあとは樹林帯の中の重たい雪を滑り、シール歩行、シートラーゲン、途中デポした靴を回収して下山。
 下山後は富山で打ち上げ。疲れた体にアルコールを流し込み、長年の夢だった薬師岳スキーの成功を皆で喜び叫んだ。三峰山スキーメンバー、サイコー!

重雪に転がって喜ぶミーコ三峰スキーメンバーサイコー!

 今シーズンのスキーはこれで終了。昨年も雪は少なかったが、今年はさらに少なかった。来年はどうなることやら・・・。

〈コースタイム〉
【5月3日】 飛越トンネル(8:40) → 北ノ俣避難小屋(15:10)
【5月4日】 北ノ俣避難小屋(5:00) → 分岐(8:40) → 太郎小屋(11:30) → 太郎小屋出発(12:00) → 薬師岳(14:45) → 太郎小屋(17:00)
【5月5日】 太郎小屋(7:30) → 薬師岳山荘(9:40) → 薬師岳(11:10) → 金作カール(11:30) → 中央カール(13:00) → 中央カール上部(14:30) → 鳶谷(14:50) → 太郎小屋(17:00)
【5月6日】 太郎小屋(6:50) → 分岐(9:15) → 飛越トンネル(15:00)

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