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雪山登山・大峯奥駈道
永岡 恵二

山行日 2024年12月28日~30日
メンバー (L)永岡、川口(修)

 大峯奥駈道。高野山・熊野三山などと共にユネスコ世界文化遺産に登録された吉野から熊野までの約170kmの修験者の修行の道である。三峰山岳会でこの道を歩いた人は僅かふたり。佐藤明氏、斎藤吉夫氏のみ。踏破後の二人を見れば、いかにこの道が厳しい道だったかが理解できるだろう。それを今回厳冬期の踏破を目指すことにした。例会にしたものの、参加者はいないだろうと思っていたところ、川口氏が参加してくれることになり、50代コンビで修行の道を目指すことになった。

【12月28日】
女人結界へ  高速夜行バス、電車を乗り継いで、登山口の吉野駅へ。吉野で下車したのは数人だった。ゆっくり準備して、スタート。しばらくは車道歩きだ。まずは世界遺産の神社巡り。蔵王堂、吉野水分神社、高城山は巻いて、金峯神社。そして、女人結界の山域へ。
 ここからが、登山道の始まりである。雪がうっすらとある登山道を順調に進む。まずは四寸岩山。木に「四寸岩山」と記載してあるビニールテープが張り付いていただけの地味な山頂だった。
 この山頂を下った先の二蔵宿小屋が今晩の宿泊予定地。地図には冬季使用不可と記載していたが、記録によっては可能ともあり、使用可否は行ってみての判断だった。到着してみると、使用不可。小屋が使えず、テント泊となるなら、時間も早かったため、先に進むことにした。大天井ヶ岳の巻き道に何か所か等高線が広い場所があり、いい場所があればそこにテントを張ろうとしたが、結局五番関まで行ってしまった。途中、水場があり、運よく水も取れた。五番関は風が強いため、100mほど下った登山口の東屋に幕を張った。
五番関

【12月29日】
深い雪道洞辻茶屋  暗い中、アイゼンをつけて出発。雪がしんしんと降る中、朝一から五番関までの急坂を登って、よく写真に出ている女人結界の門をくぐり、山上ヶ岳へ向かう。
 しばらくすると雪はどんどん深くなる。先を行く川口氏のトレースがありがたい。洞辻茶屋で大休止。すると後から続々と人が入ってきた。清浄大橋の最短ルートで上がってきた人たちだ。その中の1名が我々に「トレースありがとうございました」と礼を言ってきた。彼は昨晩二蔵宿小屋でテントを張って、我々のトレースを追ってきたとのこと。彼はソロで大峯奥駈道を行くとのこと。
 大休止後、山上ヶ岳へ向かう。ここからは雪はさらに深くなっていくが、トレースがしっかりあり、ルートは明確だ。途中の登山道から、山上ヶ岳直下の宿坊が見えた。いくつもの建物があり、ちょっとした集落[KA1]のようだ。宿坊を通過すると直ぐに山頂直下の大峯山寺に到着。寺の脇にザックを置いて山頂へ。この日、我々より先に登頂したのは洞辻小屋から我々より先に行った1名のみだったため、トレースはあるものの、雪深く苦労した。

頂上湧出岩頂上お花畑  大峯山寺から先はノートレースになる。本日の宿泊予定は、行者還避難小屋だが、今までの行程で、想定以上の雪深さのため、無理と判断し、小笹ノ宿避難小屋を宿泊場所とすることにした。下りのため、すぐに到着するかと思ったが、予想以上に雪深く、地形もわかりづらく、無積雪期なら40分位のところを2時間も要してしまった。この先進むとなると、このペースでは非常に厳しい。エスケープルートもないため、今回はここで敗退を決断。
 敗退ルートにはどうするかだが、阿弥陀ヶ森まで進んで、そこから北和田口へ降りて、バスで帰ろうと一杯やりながら、川口氏と話していると、途中から合流した52歳のソロの人も同じルートで下山すると話してきた。
 敗退となると、今晩が最後の夜である。酒、食料を気にせず消費できると、普段飲みなれないウイスキーをしこたま飲んで、フラフラになって就寝した・・・。

【12月30日】
大峯山寺からの日の出  今日は残念ながら敗退の日。同じ小屋に泊まった52歳が小屋を出る時に、どこへ下るか質問してきた。昨晩話したのに、なぜだろうと思いつつ、回答すると、下山したところのバスは28日で終わりみたいですよとのこと。急遽我々も予定を変更し、山上ヶ岳に登り返して、清浄大橋方面に下山することにした。
 山上ヶ岳への登り返しは昨日と今朝先に行った1名でしっかり踏み固められていて、昨日あれ程苦労したのに、あっという間に山頂直下の大峯山寺に到着した。
 そこから先は山上ヶ岳への最短登山道だけあって、しっかり整備されており、清浄大橋まで一気に下山。あとはつるつるの車道を歩いて、洞川温泉へ。バスの時刻をチェックし、ひと風呂浴びて、帰路についた。

 今回の敗退の最大の原因は、積雪量の見込み違いだった。直前のヤマップの記録では部分的に最大で50cm位ということだったが、実際は場所によっては腰まであり、ノートレースでは進むスピードは極端に遅くなるし、体力の消耗も激しい。装備がしっかりあったとしても、今回の日程では踏破は不可能だった。
 リベンジは洞川温泉からのスタート予定。今年末の紀伊半島の積雪が少ないことを祈る。

〈コースタイム〉
【12月28日】 吉野駅(8:30) → 女人結界(11:15) → 五番関(16:15) → 五番関駐車場(16:30)
【12月29日】 五番関駐車場(6:10) → 洞辻茶屋(9:30) → 山上ヶ岳山頂(11:30) → 小笹ノ宿避難小屋(14:00)
【12月30日】 小笹ノ宿避難小屋(8:00) → 大峯山寺(8:40) → 洗浄大橋(11:30)

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