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山スキー・横前倉山シーハイルルート
荻原 健一

山行日 2025年2月23日
メンバー (L)荻原、川口(修)、永岡、清水

(プロローグ)
 東京新聞時代の岳人2006年12月号にて服部文祥により「地元山岳会(山スキー同人シーハイル)の隠していたルート」として紹介されたのがこのルートだ。この時は広大な雪原となっている風吹大池のど真ん中にテントを張って、その日のうちに横前倉山の北東にある大斜面を滑って登り返し、翌日風雪の中もう一度この大斜面を滑って下部の難しいルーファイをこなして北小谷に抜けている。この岳人は今でも私の手元にあるが、出版された当時の私は雪稜・アイスの活動が中心で、とてもじゃないがスキーで行ける気がしない憧れルートの一つとして心の奥底に仕舞い込んだ一本となっていた。それから6年後の2013年3月に栂池・天狗原から尾根経由で風吹大池に入って、やはりど真ん中にテントを張り、翌日は箙岳~蒲原山~紙すき牧場~北小谷に抜けるルートを例会山行で計画し無事に遂行した。更にそれから12年の時が経ち、今回ようやくこのルートに挑戦出来ることとなり、55歳のおじさんの気分は高揚気味である

【2月23日】晴れ時々霧
 前日は終日雪のため白馬コルチナより電車でGO!ルートを滑って中土駅へ。軽いパウダーで明日への期待が膨らむ。そして本日は栂池のゴンドラに朝一番で乗り込み順調なスタートを切る。この時期はロープウェイが動いていないので栂池自然園までシール歩行で進む。成城大学小屋のところから天狗原の東端に出る尾根を進みたいところだが、雪が深くラッセルで苦戦する予感がしたので天狗原に向かう通常のルートを取る。途中からトレースを外れ天狗原の東端へ。ここでシールを外して唐松沢へ滑り込むが、とにかく雪が深い。最初こそ急傾斜で気持ちよく滑れるが、緩斜面になってからは潜るだけで全く進まない。しょうがないのでシールを付けての下りラッセルの開始となる。ようやく登り返し地点に到着するが、ここからも当たり前だがラッセルは延々と続く。4人で交代しながら少しずつ標高と距離を稼いでいくと風吹大池に滑り込む尾根に乗り上げる。結構な急斜面だがシールを外している暇はないので、そのまま大池に滑り込む。広大な雪原となっている大池を横切り、もうひと登りすると横前倉山の山頂だ。

雪原となっている風吹大池横前倉山 山頂にて

 山頂の東端に移動するとどの記録を見ても絶賛されている北東面の大斜面が眼下に広がる。しかも雪質はフワッフワの極上パウダーだ!
 滑り始めるとともにガスが濃くなってくるが、ギリギリ滑るのに支障はない程度だ。ターンを切ると顔パウどころかオーバーヘッドパウダーで何も見えない。サングラスからゴーグルに替えると視界良好となり、この後は夢のようなパウダー祭りを存分に楽しむ。夢の時間はあっという間に過ぎ、下部の難しいルーファイを無事にこなすと南俣沢にかかる橋の手前に出る。ここでシールを付けて林道沿いの緩い登り、しばらくで林道から離れて来馬集落への最後の滑降を終えて本日の宿となる来馬温泉・風吹荘へ。18年越しの思いが叶った充実の一本であった。

〈コースタイム〉
栂の森(8:20) → 横前倉山(14:30) → 風吹大池 北登山口(15:50) → 来馬温泉 風吹荘(18:30)


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