トップページ > 岩つばめ一覧 > 岩つばめ376号目次

雪山登山・鹿島槍ヶ岳東尾根~五竜岳
鎌倉 季美恵

山行日 2025年5月3日~6日
メンバー (L)古屋、青木、鎌倉

 今年も4月下旬から気温は急激に上がっていたがまだ雪は十分にある鹿島槍ヶ岳東尾根~五竜岳(行けたら唐松岳)へ繋ぐ山行へ行ってきました。

【5月3日(土)】
序盤の薮急登  7時に大谷原登山口に到着。車は既に3台ほど停まっており、神戸ナンバーのキャンピングカーからぞろぞろと人が出て来る。神戸労山かなぁ~と冗談で話していたが、下山後に本当に神戸労山チームだと知る。この冬に赤岳鉱泉でお会いした方もいたそうだ。話しかければ良かった。天狗尾根に取り付くも雪の状態が悪く敗退されたようだ。
 7時40分出発。林道を30分ほど歩き、取り付きやすそうな位置から尾根を目指す。なかなか荷物が重く急登で薮を掴みながら登るのはかなりヒヤヒヤした。始まってすぐにこんなんで大丈夫なのか?と心配になる。
 尾根に上がると雪が出て来た。適当な場所でアイゼンを装着して上がっていく。雪はややグズついていた。今日のものかわからないが踏み跡がちらほら出てきた。
 見晴らしが良い場所に出ると、サウナより汗をかいている状態の私には冷たい風が心地良かった。
 一ノ沢頭が遠くに見えた所で踏み跡の主であろう先行2人に追い付いた。どうやら雪の状態が悪いのでここで引き返すようだ。お気をつけて~と笑顔で見送って頂き、少し元気になった。
 徐々に雪はクラックが入ったり崩壊して繋がらなくなってきた。不安定な雪薮岩のミックスに気を使いながら上がっていく。一ノ沢頭を過ぎてからは雪がさらにグズつき、ぽろっと折れそうな細いナイフリッジは馬乗りして通過して行った。
馬乗りは安定感抜群  初日はニノ沢頭まで行く予定だったが、手前に平らな良い場所があった。とりあえず休憩、と重いザックを下ろしたら最後、もうこの日は背負う事は出来ずここを幕場とした。スノーブロックを作りテントを張り、ついでにスノーテーブルも作った。のんびり出来るのも今日しか無いという事で憧れのGWスノーテーブル宴会をしたかった。が、宴会を開始した途端に雨が降って来て、すぐ止むかと思いしばし耐えたが次第に雨が強くなって来たので、仕方なくテントへ入った。青木さんの肉炒め定食を食べてすぐに就寝した。

【5月4日(日)】
離陸直後に手が悪い第一岩峰  7時半出発。薄曇りで時々日が当たった。歩き始めてすぐにニノ沢頭に到着。記録に書かれているようにテント10張りは張れそうだが、風がもろに当たるので昨日の幕場の方が良いように感じた。ニノ沢頭からは第一岩峰が良く見えた。雪の状態の良さそうなルートをトラバース気味に繋げて歩いた。クラックに注意しつつ歩いたが、時折腰まで埋まる位落ちて抜け出すのに時間がかかった。
 10時半第一岩峰取付き。古屋さんがリードで登り、青木さん、鎌倉が登った。離陸してすぐに悪い。雪は無くアックス効かず手探りでホールドを探すもなかなか脆い。這いつくばるように上がった。
第二岩峰1ピッチ目終了点から  第一岩峰を過ぎると急登になり休憩場所を探すのにも一苦労した。第一岩峰からもトラバースしつつ第二岩峰へ向かう。遠くから見た第二岩峰はほぼ垂直であんなところ登れるのか?!と思っていたが、近づくと階段のような形状になっていた。しかし全く雪がついていない・・・全2ピッチなので簡単な1ピッチ目をリードさせて頂く。核心のチョックストーン手前でピッチを切る。良い終了点は無い。ボロいリングボルト1つとチョックストーンの真下にアックスを打ち込んで支点を作った。青木さんと古屋さんが登って来たが、とにかく狭い!全員ザックは重くデカく身動きし難い。おしくらまんじゅう状態であった。もう少し下でピッチ切れば良かったか・・・?

チョックストーン上の手を探るも無く足も絶妙に悪い  核心2ピッチ目は古屋さんが空身で登る。チョックストーン上に良いホールドが無いようでお助け紐をセットしてもらった。全装で手のホールドが無いのはかなり恐ろしかった。お助け紐と岩にしがみ付くように這い上がっていった。
 第二岩峰をようやく抜けたと思ったら山頂までの道のりは吹雪に変わっていた。ゴーグルに付け変えれば良かったのだが荷物を下ろせる場所も無く、サングラスは瞬く間に凍って何も見えなくなってしまった。サングラスを取ると吹雪はビシビシと顔に当たり、目も開け難く、足元しか見えなくなってしまった。もたもたしていたら前を歩く青木さんとの距離がどんどん離れていった。後を歩いていた古屋さんがそれに気付いてくれて、私の目の前を歩いて“足元だけ見てついて来て!”と言ってくれたので、何とか吹雪の中を歩く事が出来た。
 吹雪は止む気配を見せず、頂上直下に幕を張った。良い場所などあるわけが無くヨレヨレの体でスコップで掘りまくって整地した。テントの4分の1は落ちているが3人は寝られる幕場が出来た。雪まみれのままテントに逃げ込み、疲れで動けなくしばらく呆然としていた。夕飯は鎌倉の鳥鍋を食べた。この日は冷え込み、プラティパス湯たんぽを作り就寝。

【5月5日(月)】
ついに鹿島槍ヶ岳頂上!  朝起きると薄く雲はあるが晴れていた。6時出発。気温は低く雪は締まっていて歩きやすい。
 6時45分に鹿島槍ヶ岳頂上に到着。雲は少しあるが北アルプス、立山連峰が見渡せた。
 山頂からはたまに出ている夏道を使って五竜岳を目指す。キレット小屋まであと少し、という所で夏道でも落ちたらお終いの断崖絶壁に道を塞ぐように雪が残っていた、残地支点にロープをセットして懸垂下降で5mほど降りた。その後ハシゴを登ると大きなクラックが入る雪壁が道を塞いでいた。ここも雪が崩壊したら終わりなのでロープを出した。
 天気も良く順調にキレット小屋に着いた。昨日の吹雪は何だったんだと言うくらい晴れていて、キレット小屋からくっきりと剱岳が良く見えた。同じ日程で剱岳に入ったスキーチームと雪稜チームは何処にいるかな、と話したりしながら大休憩した。
 キレット小屋を後にして五竜岳へ向かう。ここからは南に面している部分が多いのか、雪が無く夏道が出ている箇所が多かった。数週間前に研いだアイゼンが丸くなっていくのに耐えられず私だけアイゼンを脱いだが、数分後にカリカリに凍った下りが出て来て再びアイゼンを装着する。(とほほ)
 その後いくつかピークを踏んで16時過ぎに五竜岳山頂に到着。
 風も強まり、日も傾き始めていたので、山頂で休憩はほどほどにして五竜山荘へ向かった。17時半に五竜山荘に到着。翌日の天気が悪いせいかテント場は貸切だ。受け付けを済ませて閉店ギリギリの売店で酒を買い、テントの中でこの山行の成功に乾杯した。当初は唐松岳までの縦走の予定だったが、あの天候と雪の状態で五竜岳まで行けた事に大大大満足なのであった。この日は古屋さんの麻婆茄子丼を食べて就寝。

絶景キレット小屋最高!五竜岳山頂到着

【5月6日(火)】
滑っている方が結構多いスキー場の脇を歩く  起きると湿った雪がテントを叩いていた。外に出ると昨日は土が見えていたテント場は5cmほどの積雪で真っ白になっていた。雪は雨に変わり、小降りの中で片付け、6時過ぎに五竜山荘を出発。踏み跡は消えていたが昨日までの道のりに比べたらとても歩きやすかった。グリゼードもどきで遊びながら滑り降りていたら、あっという間にアルプス平駅に到着。そこからゴンドラで一瞬にして人間界へ降り立ち、スキー場から大谷原駐車場へはタクシーを利用した。タクシーはスキー場の迎車専用電話で呼んだらすぐに来てくれた。
 下山後は薬師の湯に入り、その後近くのお店でご飯を食べて(天暇楽テンカラと言う店で超オススメです!)帰路についた

 今年は山をやり始めてから初のGW雪稜に行く事が出来ました!GWの暑かったり吹雪いたり、情緒不安定な天候に振り回されながらも4日間山を歩けた事はとても良い経験になりました。
 古屋さん、青木さんありがとうございました!!

〈コースタイム〉
【5月3日】 大谷原駐車場(7:40) → 一ノ沢頭(12:10) → 幕場(14:30)
【5月4日】 幕場(7:30) → 第一岩峰(10:30) → 第二岩峰(13:30) → 幕場(16:30)
【5月5日】 幕場(6:00) → 鹿島槍ヶ岳山頂(6:45) → キレット小屋(9:50) → 五竜岳(16:10) → 五竜山荘(17:30)
【5月6日】 五竜山荘(6:00) → アルプス平駅(8:50) → 大谷原駐車場(10:10)

トップページ > 岩つばめ一覧 > 岩つばめ376号目次