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山スキー・月山肘折ルート
川口 修

山行日 2025年4月12日
メンバー (L)川口(修)、小芝(麻)、萩原

 月山の肘折ルートに一度は行ってみたいと思っていたが、なかなか踏ん切りがつかずにいたところ、マキさんの「肘折行こうよ~」の一言で今回の計画に至った。
 ただ、車の回収などを考えると、なかなか計画が大変だなぁ・・と思っていたところ、KGさんが同じ週末に清川行人小屋泊で月山に滑りに行くとのことなので、車の回収の協力をお願いしたところ、快諾してくれた。おかげで随分と楽に計画を組むことができた。
 往路は福島で前泊、私の車は福島駅近くのコインパーキングにデポして、KGパーティの車に便乗して月山に、帰りは肘折温泉から新庄駅までバスで移動、新庄駅から新幹線で福島駅まで行き、車を回収するという寸法だ。山形新幹線は福島駅まで、在来線規格の線路でスピードが遅いため特急料金が安いのだ。月山スキー場まで回収に行くのと比べると、時間もコストもかなり節約できる。
みんな一緒に記念撮影  当初、土曜日は月山スキー場にステイして、日曜日の早朝、リフトが動く前に取り付き、9時前には山頂に、と考えていたが、日曜の予報が悪く、天気の良さそうな土曜日にリフト利用での決行を決断。時間は少しタイトになるものの快晴無風という絶好のコンディションでの山行となった。7時のゲートオープンを待って車でスキー場へ行き、リフトで山頂駅へ。ここまではKGパーティと一緒である。
 せっかくなので皆で記念写真を撮り、まずは月山山頂を目指す。夏道の登山道は多くのBCスキーヤーと登山客が列を成して歩いているが、雪があるのだから牛首下を通り直線的に牛首を目指す方が早くて楽なのだ。私のパーティはシール歩行で直線的に、KGパーティはシールなしで、少し斜面を落としつつ早速滑りを楽しんだ。おかげでスタートはのんびりだったものの、牛首に着くころにはこの日の先頭集団に加わった。ここまではKGパーティともほぼ一緒であったが、さすがにこの先は急登、昨年に比べて雪が多く、歩きやすいとはいえ、ここからは大量のお酒と食材を担いでいるKGパーティと徐々に離れていき、山頂に着いた頃にはすっかり離れてしまった。
月山神社の屋根の上・・・  この日の山頂登頂時は晴天で360度の雲海、遠くに鳥海山が雲の上に浮かんでいる。見た目は素晴らしいが、下はガスガスなのだ・・・ただ、この先のルートを考えるとKGパーティもガスが抜けるのも待っている余裕はない。月山山頂を少し堪能したらすぐに準備を整え滑走開始である。最初にして最大のハイライト、山頂直下の大斜面は極上ザラメ、思わず声が漏れる。ただ予想通り300mほど下げると雲の中に入ってしまう。広い緩斜面で危険は感じないが一面真っ白、スキーヤーズレフト側の沢に入らないように慎重に位置を確認しながら尾根寄りのルートを取って千本桜を目指す。幸いにして、150m程度落としたところでガスは薄くなり千本桜まで着いた時にはすっかり雲の下だ。
 ここからは徐々にルートが険しくなる。まっすぐ尾根上を行きたいところだが、部分的にクラックも見える。クラックを避けながら慎重にルートを選んで進むと、右手にいい感じの沢筋があり、雪も十分あり滑りやすそうだ。この沢筋は滑っている記録も多いので、尾根からではなくこの沢筋から清川橋を目指すことにする。

千本桜から下を望む沢に滑り込む!

特徴的な三角の大岩  清川橋までは順調だ。ここまで1,000mを一気に降りてきたことになる。シールを付けるため一本取る場所を探していると、沢の向こうの台地に一人先行者が見える。ここにいるということはやはり肘折ルートか。若干トレースを期待しつつ、我々は沢の手前でシールを付け一本取る。いよいよ念仏ヶ原への登りである。特徴的な三角の大岩の右側の沢筋を登る。
 順調に来ていて比較的のんびり休憩も取ったので、先行者は先に行くだろうと思っていたが、なかなかのんびりしていて動く気配はない。挨拶だけ軽くかわして先行する。年配の男性でしかもソロ、以前に2度ほど来たことがあるとのことであり、自信があるのだろう・・・だったら、さっさと先行してくれりゃいいのに・・と内心思いつつ、沢筋に取り付くと、なんと後ろからついて来るではないか!?
 何はともあれ、30分もかからずに念仏ヶ原に乗り上げる。この時点ではまだ空は雲に覆われているが、乗り上げるとだだっ広い雪原が目の前に広がる。
広い雪原を行く  避難小屋の方向を確認して、ただただ広い雪原を進む。念仏ヶ原に出ると、歩き重視と思しき割と細めのクロスカントリー寄りの板を履いたおっちゃんは颯爽と我々を追い抜いていった・・・。
 念仏ヶ原の広い雪原淡々と進んでいく。やはり自然の中を歩くのは気持ちいい。しかも広大な雪原である。これもスキーツーリングの醍醐味の一つではないかと思う。予想に反して避難小屋はかなり露出しており、十分使えそうだった。例のおっちゃんはここでガス缶やらを広げて昼食の用意をしていた。確かに12時を回ってお昼時ではあったが、我々は先に進むことにする。避難小屋から20分ほどで尾根に乗り上げると小岳に連なる尾根が一望できる。雪もしっかりついていて問題なさそうだ。小岳に向かうなだらかな尾根に取り付くと空は徐々に雲が取れてきて、青空がのぞき始める。途中振り返ると遠くに月山山頂まで望め、しばし見惚れるほどの景色が広がっていた。それにしても随分な距離を滑ってきたものだ・・・
いつの間にか雲が取れて月山が一望できる  途中休憩を取り眺望を楽しみながら1時間弱ほどで小岳に到着、シールを外して本日2度目の滑走準備である。
 ここから赤沢渡渉点まで沢筋を一気に滑り降りる。後半は緩斜面であるが難なく赤沢渡渉点に着き再びシールオン。目の前の鞍部に向けハイクアップすると20分もかからず鞍部に乗り上げる。
 鞍部からは猫又沢に向けて再度滑り降りることになる。極めて順調だ・・・と油断したのがいけなかった・・・猫又沢は少し斜度のある狭い尾根を滑り降りる。ツリーホールが多いが雪がしっかり付いていて滑走に支障はない。しかし猫又沢手前に到達すると沢が露出していて渡れそうなところが見当たらない・・ここで慎重にルートを確認すればよかったのだが、沢の下流側がつながっていて簡単に渡れそうだったので下に降りてしまった。これが失敗だった。痛恨のミスその①である。結局越えられずに200mほど落としてしまい、引き返すこととなった。幸い露出した沢のあたりに乗り上げられそうな斜面があったので、シートラで尾根に乗り上げることができた。
割れて露出した沢、右側の斜面から尾根に  ここからはシールを外し尾根に沿って滑って進む。程なく大森山西鞍部に着く。大森山を越えれば終わったも同然だ、なんとなく気が緩む・・・鞍部への乗り上げは完全に地面が露出しており、スキーを外して担いで尾根に乗り上げて鞍部まで歩く。ここで大森山山頂までシートラで登るか、トラバースして山頂を巻くかの判断に迷う。長い道のりを越えてきたメンバーの疲労度も考えて巻き道を選択する・・・今回の痛恨のミス②である。雪も柔らかくそれほど難しいコンディションでは無かったのだが、とにかくツリーホールが多く、それらをかわしながらのトラバースは疲労の蓄積と合わせてなかなか厳しく、かえってメンバーに苦労を強いてしまった。結局南側の傾斜の緩い尾根の斜面を利用してシートラで30mほど高度を上げてもらい、そこからトラバース気味に滑走して東側の尾根を捕まえて肘折登山口まで滑り降りることとなった。大森山は雪が付いているのであれば多少無理してでも山頂を経由した方が楽に抜けられるのではないかと思う。あとは時折ショートカットしつつ林道を縫っての下山である。林道を順調に抜け18時過ぎには平地へとたどり着き、暗くなる前に宿に着けるかな~などと考えていたがそれも甘かった・・・今回、肘折温泉の中心部からは少し離れた宿を予約していたため、ほぼスキーを履いたまま行くつもりで、下山後は除雪のされていない平原を最短距離で宿を目指したところ、宿まで50mほどのところで地形図にはない沢のような溝に行く手を阻まれる・・・ここにきて痛恨のミス③である・・・結局うまくルートが見つけられず少し戻って、GPSで除雪されていない道路の上をなぞって、宿へと向かう・・・なんだかんだとヘッデンでの宿到着となり締めくくりとなった。(お世話になった金生館の女将には心配をかけてしまった・・・)
 月山肘折ルートに行くにあたって、時間的に不安なところもあったが、噂に違わず充実感たっぷりの素晴らしいクラシックルートを堪能できた。下山するのが秘湯感あふれる温泉街というのもまたいい。今回痛恨のミスにより余計な労力を強いてしまったものの、付き合ってくれたマキさんとハギーには感謝しかない。また、機会を作って訪れたいルートである。

〈コースタイム〉
月山リフト山頂駅(8:20) → 牛首(9:10) → 月山山頂(10:00) → 千本桜(10:40) → 清川橋(11:05) → 町村境(11:55) → 念仏ヶ原避難小屋(12:20) → 小岳(13:35) → 赤沢川渡渉地点(14:05) → 猫又沢渡渉地点(15:00) → 大森山西鞍部(16:25) → 肘折登山口(17:40) → 肘折温泉(19:20)


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