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夏山合宿 中央アルプス縦走
岡野 淳

山行日 1962年7月12日~15日
メンバー (L)岡野、中山、横田、小沢、野田、上村、原口、小磯、浦島、渡部、高橋、宮原、三村、大沢、花岡

7月12日(晴のちガス)
 バスの終点、伊勢滝で下車する。夏とは言っても高度があるので肌寒い。インスタント食品の朝食を済ませ、伐採のために作られたジープ道を登り出す。10分も歩いたと思う頃「駒ヶ岳登山道」と記された指導標に導かれ道を右にとり三沢の山道となる。黒川に沿って樹林の中を一しきり、そろそろ一本たてたくなる頃になると沢とも分かれ尾根の上を登るようになる。点々とある合目の標示七合目を通過したのが8:55、眺望のない尾根の登り、ただ前者の靴を見ながら黙々と歩く。低山樹から白樺に変わる頃になると傾斜も急となると共に睡眠不足が祟り始めピッチも乱れがちとなる。
 急登しばし、小平地に飛び出すと尾根の突き上げとなり急に眼前が明るくなり這松帯となる。ここからは稜線の腹部を巻き気味に少し下ると濃ヶ池に出る。池はすり鉢状の中にあり池畔には立派な鳥居が建っている。
 池から稜線へのトレースは何本かあるが重荷のため最も安全度の高そうな右寄りの草付きのガレを登る。急峻なためか、それとも疲労が出てきたのか大休止の直後だが遅いピッチだ。相互に気合を掛けながら強引に登りそれでも下から見たほど状態は悪くないので思ったより早く稜線に出る。この頃になると朝晴れていた空も一面ガスに覆われ周囲の眺望は全然ない。ガラガラの岩礫の縦走路を遅いピッチで登り詰めると大きな祠の建ててある駒ヶ岳山頂に着く。ガスのため展望が悪いので一休みして出発する。緩い下り、砂礫と這松の縦走路の中に建っている宮田小屋を見送り中岳の木曽側を巻いて宝剣宮田小屋の前まで来る。
 パーティ全体の疲労の色は濃くなってきた。前進すれば檜尾小屋までキャンプサイトはない。入山第一日目に無理をすると後日に悪影響を及ぼすので前進を取り止め予定変更して行動を停止する。偵察の結果、駒飼ノ池にキャンプすることになり稜線より伊那側に分かれ池とは名ばかり砂礫の湿地帯に下る。

7月13日(曇のち晴)
 東天の白む肌寒い早暁、昨日下ってきた這松帯の中の道をジグザグに登ると宝剣宮田小屋に出る。眼前にはガスを通して天狗岩の奇岩がそそり立っている。その横を通り痩尾根状を登ると狭い山頂に着く。展望がないので休憩もせずに下り始める。
 頂上からは木曽側をトラバース気味にガタガタの大下りとなり所々面白い所が出てくる。この下りが終わると極楽平となる。この辺りから様相が一変し砂礫と這松の織り成す高原的な所となる。緩い起伏を幾つか越えると檜尾の頭に出る。これより右に一旦下って小さなピークを幾つか越えるが朝から悪かった天気が一層悪化し雨が降り出してきた。しかし、ここまで来ては木曽殿越まで行かなくては処置の方法はない。東川岳の登りになる頃は雨は強く非常に苦しくなってきたが強引に登り続け東川岳に着く。一本立てたいところだが全身が濡れているので休まないでピークを通過する。それでも山頂に達した頃より雨は小降りになってきたので助かった。
 下りに次ぐ下りで木曽殿越に着く。ここの小屋で先客が火を燃やしていたので休憩しながら暖をとる。着替えるべきか否か迷ったが雨も止み体温で乾き始めたので、そのまま行動することにして小屋を後にする。いよいよ主稜中最も苦しいアルバイトが始まる。一歩一歩ゆっく売り登る。この頃になると雨も止み時折ガスが切れて木曽御岳がガスの中に姿を現す。空木岳は頂上が見えながらなかなか遠い。花崗岩の感触を楽しみながら木曽側より登り詰める。ゴツゴツした岩の登りが危険な所には鉄鎖が付いているので安全だ。やっと頂上に着く。第二回目の昼飯を兼ねた大休止。しかしパーティの様子では越百までは困難だ。キャンプ地を一つ縮めることにして出発する。山頂より一旦下り中田切、赤椰岳と大きく上下すると足下に円形カールが展開する摺鉢窪の分岐点に達する。分岐点より下ること15分カール状の底に着く。

7月14日(晴のち雷雨)
 昨日に引き換え快晴なので張り切って出発する。しかし朝焼けがあったので一抹の不安が感じられた。昨日下った道を引き返し稜線に出る。ここからの眺望は南アが広く見渡すことができる。秀麗富士が美しい姿で座しており、振り返ると木曽御岳が目に入る。このあくなき眺望に魅せられながら登ると知らぬ間に南駒山頂に着く。南駒で休憩も取らず下り仙厓嶺へ向かう。案じられた天候はガスが去来し始め南駒と仙厓嶺は姿を消してしまった。
 仙厓嶺と言っても大した所でもなく木曽側を巻いて登って行く。所々鎖が付けてあり奇岩を越えると花崗岩の砂礫の中の仙厓嶺ピークの指導標が建っている。ここまで来るとガスは再び上がり岩間越しに南駒が遠くは空木が見渡せる。緩い起伏2~3回、一面這松帯の越百山に達する。越百山から南越百までは大した起伏もなく伊那側を巻いて達する。南越百の砂地を通過すると這松と熊笹の密生した所を一旦下り、下り切った所より樹林帯の痩せ尾根の登りとなる。眺望のないまま登り続けると、これが山頂かと思うほど痩せた尾根の一端に出る。この山頂には奥念丈岳山頂と記された比較的新しい標が建っている。奥念丈で一本立てていよいよ南部の縦走を始める。
 道は今までと一変して全然なく微かに熊笹の背が低いのみで一寸でも注意を怠ればたちまち迷うような所である。倒木と迷路に悩まされながら痩せ尾根を過ぎると尾根は急に広くなり、身の丈もあるような熊笹の中の大下りとなり松川乗越に出る。乗越からはコブを三つ越えると傾斜が急な登りとなり、これを頑張って登り詰めると山頂だけが木を切り開いて草原となっている安平路山にでる。山頂を後に樹林帯もほんの僅か熊笹の下りとなる。
 三の沢の頭で水を補給し下り続けると湿地帯の鞍部に出る。ここからの登りは白樺の倒木の中を登るが急に雲行きが悪くなり雷雨に遭う。豪雨の中の登降2回シラビソの頭に着く頃には雨は本降りとなる。この頭から大きな下りをしてコブを二つ越えるとちょっとした急登となり摺古木山頂となる。この山頂は指導標が建っているので判るようなもの、見逃しそうな所である。
 山頂からは道は一変、奥念丈以後は廃道同然全然手入れがなくトレースが判然としなかったのだが道が明瞭となる。下り気味に緩い起伏を幾つか越えると湿地帯の自然公園には迷路のように多くの道ができているが指導標があるので迷うことはない。公園から木曽側の尾根をガタガタ下ると東沢源頭に出る。この源頭で今まで雨のため安平路山以来休んでなかったのでゆっくり休憩をとる。
 濡れているので寒さが増し、ゆっくり食事をしたいところだが早々に終わらせ出発する。沢沿いにしっかりしたなだらかな道を下り小さなピークを二つ越えると東沢橋となり、橋の近くに建っている飯場小屋に入る。

7月15日(晴)
 食料は食べ尽くして荷が軽くなったので小屋を後にピッチを上げる。沢沿いに僅か下ると道路工事が行われていて山道からジープ道に変わる。水道取水口を見送り広い新道を坦々と下るとひっそりと静かな大平部落に着く。

〈コースタイム〉
7/12 伊勢滝(6:50~7:30) → 七合目(8:55) → 濃ヶ池(10:50) → 稜線(12:15) → 駒ヶ岳山頂(13:00~13:10) → 宝剣宮田小屋(13:30) → 駒飼ノ池(14:15)
7/13 幕場(4:30) → 宝剣宮田小屋(4:55) → 宝剣岳(5:05) → 極楽平(5:45) → 檜尾の頭(8:05) → 東川岳山頂(10:05) → 木曽殿越(11:25~11:40) → 空木岳(13:10~14:10) → 摺鉢窪分岐点下(15:25)
7/14 幕場(5:10) → 稜線(5:35) → 南駒ヶ岳山頂(5:45) → 仙崖嶺(6:25) → 奥念丈岳山頂(8:40~9:20) → 松川乗越(10:00) → 安平路山(11:30~12:35) → 摺古木山山頂(15:45) → 東沢源頭(16:30~16:50) → 東沢橋(18:10)
7/15 小屋(6:30) → 取水口(7:10) → 大平部落(7:50)

共同装備
品名数量
テント4
ツェルト1
バーナー3
ナベ 大1
ナベ 中2
コッフェル3
ザイル1
ナタ2
ノコギリ1
炊事用具3

燃料関係
品名数量
持参使用
ガソリン6L3L
メタ10個5個
ローソク10本10本

食料
7/12 ミルクパン
メロン
ハム
ジャム
チーズ
揚げ菓子

羊かん
米飯
キュウリモミ
野菜炒め
7/13 米飯
豚汁
佃煮
茶漬け海苔
ドーナツ
ハム
羊かん
チーズ
りんご
ビスケット
米飯
茄子味噌
マカロニサラダ
7/14 ハムライス
グラタン(ポタージュスープ)
ライス
玉子パン
ハム
いかげそ

メロン
アメ
米飯
ソーメン
スパゲティ料理
7/15 具飯
味噌汁
佃煮
かりんとう
メロン
ビスケット
みかん缶詰

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