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無題

 我々は仕事を持っている、それでいて山に登ることを楽しみにしている。何故山に登るのであろうか、俺達ゃ人間だ、今の人間社会の複雑さ、たまにゃ静かな山ン中に逃げ出したくならあね、それで山ン中に入って頭ン中のモヤモヤを整理して再び仕事に取り組む...と、ちょっとカッコイイことを言っちゃったが、何のために山登りをやっているのか俺自身わかりゃしねえ。
 寒い冬山、怖い岩場、暑い縦走路、重たい荷物、考えれば、並の人間なら嫌がることを好んで?やってんだから...それも金を払ってだ、実にヘソ曲がりの多い集団だと思う、山岳会というのは...。
 だけど、楽して楽しもうという奴が多い世の中にはこのような人間が何割か居ても良いと思う。キレイなヘアースタイル、キレイな着物、キレイな車、ロクに稼ぎもねえくせに外側だけ力ッコ良さだけを追っている奴、少々薄汚えカッコでいれば、働くこともしないでゴロゴロしている奴。俺から見れば頭カッカするもンがこの世には多すぎんね。そういう奴から比較して、ぐっと良い奴だと思う、山の好きな連中をやれ親不孝者だ、何だかんだと悪口を言う連中、特にマスコミに言いたい。やたらに無謀登山と呼ばず、実際に一緒に山に登って、そこで本当に無謀だと思ったら無謀と呼んでくれよ!それに、連休近くになると、山は荒れるから登山を見合わすようにと、しきりに山へ行くの牽制する、気象庁と放送局。そうかと思うと山は招く...等といって宣伝する観光業者、鉄道会社、間に入った俺達ゃどうすりゃイインダヨ!
 登山者が探しだした静かな美しい場所、そこをマスコミが宣伝し、資本家がやたらに○○ロッヂ、○○旅館等とデッカイ建物をぶったてやがって、高いゼゼを取って儲ける、実に頭にくるね...。
 自然を愛する登山者は俗化したそのような所を嫌って、また山奥へ行く...自分の足で一歩一歩と歩き、そして出禾るだけ自然に接しようと、薄い布でできた家で生活することを楽しみとしている俺達を構うなと言いたい。だが俺達にも反省するところはあるが。
 さてこれからの山登りはどのようにしたら良いでしょうか、ここでまた一言言いたい。現在、スポーツ(登山も含む)を楽しむ人は沢山いますが、観る側に立つ人が多すぎる感がする。スポーツとはやるものです。
 山も見るものではなく登るものだと思うね、それにしても遭難事故は減らさなければいけないよ。それにはそれなりの訓練、勉強をしなければいけないと俺は思う。
 国立登山学校のようなものを設け、山に対してのあらゆる研究を行い、登山者(家)を養成する必要があるのではないでしょうか。しかし、今の政府に頼っていたのでは到底望めそうもない。現在の政府は、何かの事業は、企業資本に頼らなければやっていけない。しかし、企業は儲からないことはやらない主義だから今の文教、福祉政策は経済成長の割には進んでいないと思う。このような状態ではどうしようもないから、やはり我々登山を愛するものは、そういう人達が一緒に協力して互助していくべきではないかね。
 ちょっと話が硬くなっちゃったので、このくらいにして次に行こう。
 我が会の会報も200号目になったとのこといや立派なものです、諸先輩の方々には深く敬意を表します。そして300号、400号と続くよう我々も頑張っていきたいと思います。それにしても、300号、400号の頃は会報の内容もさることながら、山の様子も変わるだろうね。代表的な山脈には立派なハイウェイが走る、北アルプス・ハイウェイ。富士山にはエレベーターがつき、一ノ倉沢にはロープウェイが掛かり、今まで一部の登山者にしか見ることが出来なかった風景、踏むことが出来なかった頂上が、バスや車、ゴンドラの力で、誰でも見ること、踏むことが出来る。そして、岩場を登る競技会等が行われ、クライマーの姿は常に審判室のテレビセンターに映し出され、クライマーは特別な小型無線機で連絡をとりながら登る。万一、落ちた時は背中に背負ったジェット噴射機で危機を脱する。そういう人は減点の対象になる。
 雪の原野ではレンタカーの雪上車が若いアベックを乗せて走りまくる。観光業者と資本家が大きな自然を独占してしまう...。
 こんな登山の姿になったら面白いかね?一ノ倉沢のゴンドラのガイドが言うだろうねきっと、『皆様、下に見えますこの岩場一帯は、昔は一本のザイルに身を託し、命がけで登った場所です、そして毎年何人かの人が生命をなくしていきました』

南稜テラス
  強者共が
    夢のあと

 なんてね。まあ、こんなことにはならぬと思うが、実に世の中なんてえのはやりにくいね。

ー完ー


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