佐藤 明
山行日 1985年3月2日~3日
メンバー (L)佐藤(明)、吉岡、加藤、金子、牧野、関谷、高橋(千)、小泉、井筒
今年の雪洞掘りの訓練も、約3.5mの積雪のおかげで問題なく行われ、非常に快適な一夜を過ごすことができた。
行動記録
3月2日。ロープウェイで天神平へ上がり、田代尾根北西斜面に場所を選定する(ロープウェイ駅より約200mの距離)。
9時開始し、10時30分完成。二ヶ所より掘り進み内部でドッキングし、一部屋にする。午後から全員でゲレンデスキーをする。夕方金子氏が一人で遅れて到着。途中で酒がなくなり、金子氏、井筒さんが買出しに出る。
3月3日。午前中風雪の中ゲレンデスキー。下りは吉岡氏と私が田尻沢を滑降する。所要時間は1時間。その後、谷川温泉経由で帰京する。
《横穴式雪洞構築のポイント》
- 準備するもの
(ア).衣類、カッパ上下、ゴアのミトン
(イ).道具、スコップ、スノーソー、ノコギリ(雪の中から出てくる枝を切るのに必要)
- 雪質
適度に軟らかく湿っている方が良い。固いと掘るのが大変だし、乾燥していると天井の落下や入口閉鎖による窒息の危険が大きい。
- 雪量
横穴式雪洞の場合、2m半くらい必要。
- 場所
吹き溜まりや雪庇の中でも可能だが、天候により危険となる。樹林帯中が最も安全。傾斜は急な方が工作、排雪のため有利。初心者が下降をためらうほどの急斜面が望ましい。
- 掘削
腰の高さぐらいからスコップを使って掘り始める。入口は少々大きめでも、後でブロックを積んで狭くできる。天井の雪の厚みは雪質に大きく依存するが、最低1mは必要である。
- 排雪
最も苦労するのはこの排雪作業である。今回は滑らすため工事用養生シート(カマ天のフライ)を持参した。また、入口も心もち上向きに掘り進むことで排雪の労が軽減され、結果として非常に短時間で構築できた(1時間30分。
構築時間の目安
一人用雪洞、約30分。二人用、1時間。四人を超えるもの、約2時間。
- 雪洞内部
静寂で寒くもないため快適に眠れる。雪洞完成後間もなく天井降下が始まる。従ってこれを見越して天井または床を掘っておく必要がある。加熱後、極端な降下や亀裂が入るようであれば、その雪洞を放棄するべきである。
- 最後に
雪洞は積雪期のビバーク方法としては非常に有効であるに反し、最近の山岳雑誌などにはこれに関する記事は皆無である。多分、華やかさもなく、また初心者が安易な気持ちで掘ることは非常に危険ということで記事にすることを敬遠していると思われる。しかし三峰は違う。荷の軽量化と機動性の改善、及びフォーストビバーク時の安全性の向上のためにも滑落停止同様、全会員が習得すべき技術であり、三峰の常識であるのだ。