山行日 2018年4月16日~20日(オートルートツアー5日間)
メンバー 佐藤
ヨーロッパ観光+オートルート山岳スキーツアー、16日間を楽しんできました。一緒に行ってくれる人が見つからず終始単独行動でした。今後行かれる人の参考にと思い旅行記をつづります。
【4月10日】
エールフランス航空直行便にてパリへ。エコノミー席での飛行時間12時間半は長い。せっかく通路側席を予約していたのに、当日になり窓側に振り替えられがっかり。夕方到着したシャルルドゴール空港内の両替所にて日本円をユーロに交換したところ、通常135円/ユーロのところ165円/ユーロと高く驚き。現金両替ではなく、クレジットカードのキャッシングがやはり一番有利と早速学習してしまった。
【4月11日】
終日ルーブル美術館の見学。今回は日時指定の予約券を17ユーロで購入してきたが、現地で買う当日券は15ユーロ。予約したほうが高いなんて変な感じ。またスマホに有料の館内案内アプリを入れていったのだが、出来が悪くさっぱりお目当ての作品までたどり着けない。地図の方角が勝手に回転したりズームしたりするので自分の進む方向が分からなくなるのだ。また館内が広大にもかかわらず、案内表示が少ないのも一因のようだ。うーん、顧客志向の低いフランスを実感。
【4月12日】
凱旋門やオペラ座(ガルニエ)を観光。翌日はTGVでジュネーブへの移動だったが、フランス国鉄のストで列車が運休になってしまった。飛行機運賃はあまりに高騰し買う気がしない。幸いにも最後の一枚の高速バスの切符をゲットできて一安心。TGV一等車一人席を予約して楽しみにしていたのにがっかり。フランスはとにかく労働者重視なんだよね。
【4月13日】移動日
高速バスターミナルに早めに着いたものの、バス発着の案内表示が消えていて、ごったがえす構内では皆が右往左往している。職員もいなく、到着した同じ会社のバス運転手に聞いてもあんたのバスなんか知らんとの答え。結局出発時刻を過ぎてから自分の乗るバスがターミナルのはずれに来ており、乗車手続き中なことを発見。滑り込みセーフで自分も乗車できた。
予定乗車時間8時間半の満席バスはつらい。しかもジュネーブ到着は1時間遅れ。ちゃんと高速道路を走れ!途中でバスの洗車なんかするな!うーん、お客なんてどうでもよいフランスを連日実感。でも到着したジュネーブの街は清潔でレマン湖周囲の雪の山々も美しい。
【4月14日】
オートルート出発地のアルジェンチエールへの移動日。列車でレマン湖北岸をぐるりと回りマリティニへ。雪をかぶったスイスの山々もタンポポ満開の草原も美しい。マリティニからはアプト式のモンブラン特急に乗り換える。スイスから国境を越えてフランス側のシャモニの谷に入ると急に山々は鋭くなり迫力が増す。全て定刻運行ながら接続悪く、結局5時間かかり目的地に到着。直通バスならジュネーブから1時間程度で来られるものの、少々のんびり贅沢な鉄道の旅でした。
しかもホテルの自室からはシャモニ針峰群やドリューの垂直の壁が夕日に輝き、もうこれだけで大満足。早速気分がハイになってしまいます。
夕方、山岳スキー用具一式をレンタル。ガイドはヘルメットも必須とのことで追加レンタル。でもツアー中はガイド本人もほとんどのメンバーも全くかぶらなかった。それなら要らなかったなぁ。
夜ホテルのロビーでガイド、同行メンバーと初顔合わせ。装備確認などを行う。なおこのガイド会社(Alpine Guides社)に決める前に5、6社の現地のガイド会社に参加可否を問い合わせたのだが、ことごとく断られてしまい結局ここしかなかったのだった。
【4月15日】
ツアー出発前のトレーニング日ということで装備や技術の確認をする。グランモンテスキー場に集合。チケットはシャモニ全域で使える一日券を買えとのこと。8,750円と高い。でも結局乗ったのはゴンドラ2本とリフト1本のみ。ガイド自身はシーズン券を持っているとはいえ、客に配慮してよと言いたい。
トレーニング内容はアイゼン装着、シール歩行から登りでの山向きキックターン、ビーコン操作、クレパス救助の1/2引上げ、スキー埋め込みのスノーアンカーなど。普通に山岳スキーをやっている人には一般的な内容だった。
【4月16日】ツアー1日目、快晴のちガス
ツアーに不要な荷物はスーツケースに戻しホテルに預けて部屋をチェックアウト。
昨日のグランモンテのゴンドラで頂上(標高3,296m)まで登る。展望良好で純白のモンブランも美しい。今日の雪崩リスクは3(中程度)との表示。さすがはヨーロッパのスキー場と感心する。なおスキーヤーの多くが山岳スキーを履いて、ハーネスを着けて滑っている。
岩峰上のゴンドラ駅からは長い階段を下り氷河の最上部へ降りる。ここでスキーを装着して滑り出し9時半。カリカリのアイスバーンが続く。
2,400mまで下り、右岸のモレーンの急傾斜の30mほどの雪壁をアイゼン・ピッケルで登る。10時。なお、皆が借りたピッケルにはリーシュが付いていなかった。これが今や常識なのかな。その後はシール歩行。
今回現地ショップでTLTの付いた山スキーを借りたのだが、歩行モードで歩いているうちにヒールピースが勝手に回転して滑降モードに切り替わり、かかとが固定されてしまう。そのたびにスキーを外していると後続のフランス人ガイドが見かねて、スキー板の左右を交換してみろという。意外いや発生頻度が激減して感謝だった。
最初の峠、パソン峠(3,028m)へは直下30m位をアイゼンで登り、12時到着。雲海の上に浮かぶモンブランも美しい。
トゥール氷河に滑り降り再びシール歩行。今回の参加者はみな若く、歩くのが速い。付いて行くのが大変で、次のトゥール峠(3,282m)の最後の100mほどの登りではヘロヘロになってしまった。コル着3時20分。スイス入国となるが、特に何があるわけではない。
その後ガスが出てくるが先行トレースもあり、最初の宿であるトリエン小屋(3,170m)着4時20分。小屋では自分のザックやアイゼン、ピッケルをカゴにいれて通路の棚に入れ、ドミトリーには最少のものだけを持ち込むルールだった。
なお小屋の夕食はスープから始まり、主菜の肉類とコメやパスタ、最後はデザートとなっており、どの小屋もなかなかおいしい。しかし全ての食糧や飲料はヘリで荷揚げしているため割高感がある。ちなみに水1.5Lボトルで1,500円程度。ビールも0.5L缶で700円位、ワインは1Lで3,500円程度だ。
ちなみにこの初日の行動時間が最も長い。しかも富士山八合目位の標高を歩くので、時差や高度順応に有利で、早立ち出来るアルジェンチエール小屋(2,771m)に前泊するのも良案だと思う。
また今回の服装だが、下は冬用オーバーパンツ、上はソフトシェルのみで通し、冬用ハードシェルは荷物になっただけだった。ちょうど日本の同時期の2,000m級山岳のような気温だった。
【4月17日】ツアー2日目、終日快晴
5時起床。典型的コンチネンタルの朝食を食べ、明るくなった6時20分発。ガリガリの氷河を2,750mまで滑り、エカンディ峠(2,796m)へアイゼンで登る。固定ロープもあったが半分雪の中。先行パーティはアンザイレンで登っていた。峠には7時に到着。朝日が出てきて周囲の雪の山々はオレンジ色に染まり素晴らしい。ここからのアルペット谷もアイスバーンだが平滑で滑りやすく、スピードもかなり出る。素晴らしい景色に酔いながら標高差1,300mを下り、シャンペの町に8時到着。少し歩いてカフェで乗り合いタクシーを待つ。
車で山麓を30分ほど移動し、ルシャーブルへ。ここで2日分の行動食を調達し、ゴンドラでヴェルビエに移動。出店のサンドイッチをほおばり今日のお昼とする。このヴェルビエは大きくも瀟洒なスキーリゾートで、明るい谷一面にホテルやコテージが立ち並ぶ。シャモニやツエルマットと並ぶ人気の場所らしい。
さらにゴンドラやリフトを乗り継ぎモンフォール手前まで高度を稼ぎ、少しゲレンデコース内を滑ってからショー峠(2,940m)への登り出し12時15分。シールで30分ほど登るとコルに到着。少し滑ってから再びシールを装着して長いダラダラ登りをしてモミン峠(3,015m)を越え、しばらく滑ってプラフルーリ小屋(2,657m)到着15時50分。小屋のテラスで夕日を浴びながらビールを飲む。
今回のHoute Routeは計8パーティ、50~60名がほぼ同時刻に出発し、同じルートをたどり、同じ小屋に泊まった。計4泊も行動を共にするため、どんどんお互いに仲良くなるのが楽しい。なおアジア人は私のみで、すべてが欧米人だった。
【4月18日】ツアー3日目、終日快晴
今日の行程は短いとのことで小屋を7時発。クトーで登りルー峠(2,804m)到着7時40分。連日同じだが、朝一番の斜面はカリカリ。急斜面を下り、ディ湖を左に見ながらの延々のトラバース。途中の硬い雪崩のデブリの上もスキーのままで越していく。今回はレンタル屋に強く勧められた154cmの短いスキーにして正解だった。不安定なデブリの上を歩く時は取り回しが良く、硬いアイスバーンではエッジが良く効き押さえ易い。しかもこの時期、深雪などない。自分のテレマーク板を持参したら大変だっただろうなと胸をなで下ろした。
9時15分、パドシャの登りだし。傾斜がきつく、アイスバーンで1名が滑落。幸い途中で止まったが、クトー不要としたガイドの指示も良くない。その先で大休止し、岩峰上に建つディ小屋(2,928m)到着13時。ここも大展望の山小屋で、テラスでビールを飲みながらゆっくりくつろぐ。
【4月19日】ツアー4日目、快晴
今日もゆっくり7時半発。カリカリ斜面を100mほど下り、シールで氷河を登り台地に出る。9時半。
さらに1時間でセルパンティンの急斜面下だ。ここから30度ほどの壁を100m位登るのだが、万一滑落すると数百mは落ちるような場所だ。アイゼン、ピッケルとなり、全員がアンザイレンする。といっても7mm30mのロープ1本を各自のハーネスにつなぎ、お互いに張った状態で登るというもの。大丈夫かね、と思ったが先行者のステップはバケツ状になっており難なく通過。
11時再びプラトーをシール歩行となり、12時に当ルートの最高点であるピンダローラ(3,790m)の頂上に立つ。快晴の下大展望で、西の来た方角にはモンブランやグランドジョラス、そして目指す東にはマッターホルンの鋭峰がそそり立つ。
12時50分、スキーで滑り出し。ここも素晴らしい大斜面で歓声が上がる。途中大休止をして、危い岩峰に建つヴィニット小屋(3,158m)到着13時。多くの小屋には有料シャワーがあったが、使っている人はほとんどいなかった。自分も使用なし。昼寝をした後はいつものように宴会に。夕食の牛肉ワイン煮もうまかった。
【4月20日】ツアー5日目の最終日、快晴
今日はコルを3つ越える。6時20分、小屋から氷河に降り、ガリガリ斜面を滑り、小モンコロンの大岩壁を右に見ながら緩い登りを350mでレベック峠(3,392m)7時50分。昨日のピンダローラが朝日を浴びて美しく輝き、周囲に広がる大パノラマも雄大だ。2つ目のコル、モンブリュレ峠(3,213m)は直下をアイゼンで100mほど登る。
滑れるところまで滑ってから再びシール装着。長い登りをダラダラと行き、オートルートの最終コルとなるヴァルペリネ峠(3,568m)に12時到着。マッターホルンが正面に、その右にも似たような鋭鋒のダンデヘレンが見える。居合わせた他のパーティの連中とも固い握手をして成功の感激もひとしおだ。
13時滑り出し。素晴らしい斜面の豪快滑降が続く。途中のクレバス帯には旗が立てられ危険地域が分かるようになっている。ツムット氷河に入り、マッターホルンの北裾を滑るのだが、北壁は高く見上げるばかりだ。しかしずっと右岸の片斜面でヒザが痛くなる。その後は林道となり、フリのスキー場(2,050m)到着14時。ビールで祝杯をあげ、その後はスキー場コースを滑りツエルマット15時。さらに電車で隣町のテッシュに移動し、ここから車でアルジェンチエールのホテルに戻った。
【4月21日】ツアー予備日、快晴
契約上は今日までガイドをお願いしていることになっているため、バレブランシュの20㎞にもなる滑りに連れて行ってくれるという。シャモニのエギーユミディのゴンドラ駅10時集合。切符売り場では長い列をなしていたが、ガイド専用窓口があり、そこで並ばず直ぐにチケットを購入出来た。ガイドは優遇されていると実感。運賃は63.5ユーロと高額。
40分ほど待ち、ゴンドラに乗車。11時半、頂上のエギーユミディ駅に到着。スキーを背負い、アイゼンを履いて滑り出しの台地まで100m位下降する。ロープ柵が張られてはいるが、両側が切れていて恐ろしい。
12時過ぎ滑り出し。週末なためか既に数百人が滑っている模様で、滑り出しの斜面には大きなコブが出来ている。その後のメールドグラス氷河上は広くフラットでまあ快適。下るにつれて雪が腐り、ストップ雪になるところもしばしば。グランドジョラスも目前に見えテンションが上がる。
途中大休止後、モンタンベール駅下でスキーを脱ぐ。13時40分。階段を100mほど登り、さらに鉄道駅へのアクセス用のゴンドラに乗り込む。40年前に来たときは階段を少し登って駅に入れたよなぁと氷河のやせ細りに驚く。その後は電車でシャモニに戻り皆で祝杯を上げツアーの無事の完遂を祝った。
この夜は再びアルジェンティエールに宿泊し、翌日バスでジュネーブに移動。さらにアムステルダムに2泊して帰国した。
〈費用〉
・ツアー参加費 21.4万円(ガイド料、ツアー中の山小屋4泊2食付き、アルジェンチエールでのホテル代4泊朝食付き)
・山岳遭難保険 1.2万円
・用具レンタル費 4.5万円(スキー一式、ヘルメット、スコップ)
・現地移動費 3.2万円(リフト、ゴンドラ代、ツエルマットからの帰路のタクシー代)
・飲食費 1.3万円(ツアー中の行動食、山小屋での飲み物など)
合計 32万円 +ガイドへのチップ 50ユーロ