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雪稜登攀・白馬岳主稜
齊藤 慈宏

山行日 2019年4月27日~28日
メンバー (L)齊藤(慈)、他1名

 大型連休の10連休、どこに行こうかと迷っていたら、友人から白馬主稜に行ったことある?と言われて行って来ました。
 ここ数年は雪不足もあり、GWでの主稜は少し不安ではありましたが、4月に入ってからの寒気の流入などで、アタック前夜も吹雪という恵まれた?天候の中でのアタックとなりました。

【4月26日】
 八王子で待ち合わせて中央道へ。渋滞により予定よりも30分程度遅れて白馬エリアへ。翌27日は降雪予報のため、猿倉へ向かいます。直前にノーマルタイヤに交換をしたので、路面凍結や残雪などが心配されましたが、無事に猿倉に到着しました。
 翌日は、白馬尻までの移動と取付き視察・雪上訓練と緩い内容のため、ゆっくりと休み遅い入山とします。

【4月27日】
意外と悪い白馬尻までの道のり  朝から周囲が騒がしいが、のんびり起床をして準備。お隣の単独入山の方が、猿倉荘入口でビーコンチェックをしていて、自分は持っていないから入山が出来ず困った、と話しております。
 我々は、無事に入山が出来、白馬尻へ向かう。予定では3日間の滞在の為、少しでも快適に過ごせるよう装備を沢山積んでいきます。
 これがなかなか重い...。先行者のトレースを使わせて頂き進むも所々トラバース地点では結構足場が悪い所があり、滑らしたら危険だなと慎重に...。

吹雪の中のテント設営  トレースもある為、沢山のパーティを白馬尻で期待をしていたのですが、意外にも先行パーティはゼロ。後続の単独男性と我々の3名が初めに到着。その後少し間をおいて3パーティほどが到着する。登り始めは雪はチラチラでしたが、白馬尻に着く頃は、完全に吹雪。テン場の整地をするそばから埋まっていきます。気温も高く湿雪があたり寒い。
 テントを張り終え、まずは取付き確認。 周囲のパーティに声をかけるも誰も乗ってこないので2名で行きます。念のために持ってきたワカンが役に立ちます。翌日は夜明け前からの行動の為、角度を確認しながら取付きを確認する。
 帰りは滑落停止の練習を兼ねて下山。テン場に戻ってくる頃になると吹雪もだいぶひどくなってきていますが、引き続きスタンディングアックスビレイの練習を行う。何とか思い出し、こなれて来た頃には暴風雪の様相で、急いでテントへ逃げ込む。

主稜尾根への取付き 【4月28日】
 2:30起床、4:00出発を目標に行動する。風は夜中に止み。星が奇麗に瞬いている。最高のアタック日和である。
 冷え込みもそこまでなく雪も良い感じに締まっている。 前日の記憶と角度を頼りに取付き迄進める。取り付きから、急登が始まる。

ご来光!今日は好天!!  もちろん先行者はいなくトレースもない。尾根に取り付く直下は雪庇の崩壊もあり雪崩が怖い。急いで尾根に取付く。
 尾根に取付いたところで空が白け始め朝日を望む事が出来た。

第7峰取付き  尾根上に1張テントがあった。だが周辺にはトレースはない。昨日の早朝にビバークをしたのだろうか。途中で一本立て第8峰へ向かう。ここは難なくクリア。次は第7峰。尾根上にシュルンドが走る。左の壁が登れそうな為、雪面を左上し、第7峰下部取付きに着く。雪壁は意外と立っており、若干ハング気味に感じる。

第7峰をのっこしたところ  ダブルアックスで登るもアックスの歯が細くうまく雪に刺さらず雪を切っていく。ピッケルとバイルをうまく使い分けてステップを作りながらなんとかのっこす。パートナにお助け紐を出す。

第6峰からの眺め  第7峰上部は草付きとなっており、木登りをしてのっこす。
 次は第6峰。これはピラミッドのような形をしている。引き継ぎ急登が続く。

第6峰休憩場所  ラッセルをしながら慎重にステップを作り高度を上げる。ピラミッドを越えると休憩が出来そうな所がありここでまた休憩する。

 ここからはしばらくはそれほど難しくない登りになるはずではあったが、トレースの有無で全く異なる。ナイフリッジを渡り、今まで程ではないがそこそこの急登を登る。残りは600m程あって足も段々疲れてくる。

恐ろしいトラバースひーひー言いながら歩きました

主峰が見えます。届くかなぁと心配...  最後まで足が持つか。これが心配である。

主稜が良く見えました!  背後には自分たちのトレースを使って登ってくるパーティが見て取れる。早く来て欲しいという気持ちと先頭は譲りたくないなという気持ちが交差する。

第2峰 後続が追い上げてきます  5峰、4峰、3峰と順調ではないが、駒を進めていく。雪も段々締まって来てラッセルも段々と楽にはなるが、足はどんどんへたってくる。

クライマックスの主峰への登り ここまでが恐ろしすぎて簡単に見える  第2峰の途中にヒドンクレバスがあり、2m程クレバスにハマる。さすがにこれはやばく、雪も緩いため壁を壊さないように慎重に這い上がる。ここでもパートナにお助け紐を出す。
 そしていよいよ最後の登りとなる。幸いにもここはトレースが見て取れた。前の週に登った人がいるようだ。
 事前の打ち合わせでは、ここでロープを出す予定ではあったが、ここまでの道のりが余りにも恐ろしく大変だったため二人ともトレースがあるなら大丈夫だねと、ロープはなしでフリーで登こと事に。

山頂での1枚 これ以上登れません...  後続も追いつき少し後ろで見学をしている。下部は、予想通り快適な登り。上部になると高度感とさすがに60-70度の壁だとハングをしているように感じ少しビビりも入るが慎重にステップに足を置いて登る。最後ののっこしが核心になると思い最後ののっこしは慎重に2本のバイルとピックを決めてのっこす!
 やった!!! 登頂だ!!!!とパートナに合図を送る。パートナも無事にのっこし、二人で標柱へ。
 居合わせた登山者に記念写真をとって貰う! せっかくの登頂。しかもほぼオールラッセルでの登頂となり息も絶え絶えだった。

 しばらく山頂で休憩をしながら景色を眺め、ここまでの苦労をパートナと話し、後続を待っていたが後続は一向に現れず。
 空にはハロ(日傘)が出ており、この先の荒天を知らせてくれた。ヘリも飛来し様子を伺ってくれている。
 大雪渓を下る。大勢の登山者が汗を流しながら登っていく。彼らのステップを邪魔しないように離れて降りるが、雪が深く快適には降りられない。途中からは踏み抜きが酷く雪崩の跡を通るので、暑さと戦いながらゆっくり降りていく。
 ようやくテン場が見えてきた。 時間も早いので、そのまま下山をすることに。荷物をまとめ猿倉に向かう。昨日とはえらい変わりようであった。
 猿倉に到着し、おびなたの湯にゆっくり浸かり、翌日からの立山に向けてスーパで買出しをして鋭気を養った。

〈コースタイム〉
【4月27日】 猿倉登山口駐車場(9:22) → 白馬尻(10:52)
【4月28日】 白馬尻小屋(3:31) → 白馬岳(10:32) → 白馬山荘(10:57) → 避難小屋(11:25) → 岩室跡(11:29) → 白馬尻小屋(12:09) → 猿倉荘(14:24)

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