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雪山登山・毛猛山塊縦走
荻原 健一

山行日 2022年4月30日~5月5日
メンバー (L)荻原、津田、川口

 このルートは途中に登山道や小屋が無いのはもちろんエスケープも全く取れず、人里や文明との絶対的な隔絶感を味わえるという点で今の私にはよだれものの魅力を感じる名ルートなのだ。数年前から頭の中での計画書は完成していたが、この度ようやく全てのピースが揃って会への計画書提出までは漕ぎつけた。あとは天気と雪がどれだけ残っているか?が成否のポイントとなるが、予備日もたっぷり取ってあるし、リーダー以外は精鋭ぞろい。まーなんとかなるでしょ!ということで晴天の4月30日に入山する。

【4月30日】終日晴れ
 まずは上越新幹線で浦佐駅まで。ここから奥只見丸山スキー場まで無料シャトルバスが出ており、これを利用する。リフトを2本乗り継いで、いよいよ大縦走の始まりだ。
 スキー場の雪はたっぷりで安心して出発するが1時間も歩くともう藪が出てくる。毛猛山まではほとんど藪漕ぎなしという記録が多い中、先が思いやられるがここまで来たらもう後戻りする気はさらさら無い。2ヶ所の藪漕ぎで時間と体力を奪われるが、なんとか今日の目的地である未丈ヶ岳に到着。ここから15分ほど下った尾根の途中の風下側を今夜の宿とする。

奥只見丸山スキー場 リフトトップ未丈ヶ岳山頂付近

【5月1日】曇りのち強雨
 本日は昼前から強雨予報。停滞でも良いくらいの天気予報だが、先も長いので進めるだけ進んでおこうということで5時の出発とする。赤柴山へ登りは激藪で早くも毛猛の本領発揮といったところか。この先は雪を拾いながら右にいったり左にいったりとなるが距離は稼ぐことが出来る。大鳥岳を山頂東側の雪を繋げて越えるとまもなくで独標1,204mへ。この先で今日の行動終了時間と決めていた11時になったので幕を張る。30分もすると大雨になるが、我々はもうテントの中でぬくぬくだ。昼寝なぞしながら時間を潰して夕方からいつもの作業となる。

【5月2日】曇り時々晴れのち霰(強雪)
 今日はいよいよ今山行のメインイベントの一つ毛猛山に登頂できる予定で朝からモチベーションが上がる。雪もしっかりついているところが多く藪漕ぎは最小限で順調に距離を稼いで行く。独標1,136mから毛猛山への登りとなり、独標1,257mからはかなりの急登となる。山頂直下で雪が切れると最後の藪漕ぎは猛烈となり、蔓に手足が絡め取られて全く進めなくなる。それでもなんとか山頂に到着し、今山行で最初の握手大会となる。登山道が無いのはもちろんどこから入山してもそう簡単には山頂を踏ませてくれない毛猛山の頂きに立てて大満足だ。(岳人マイナー12山のひとつでもある。)

毛猛山への登り毛猛山頂にて

 山頂から北側には雪がしっかりついており、これを使ってあっという間に独標1,268mの手前に到着。ここを本日の宿とする。テントを張り終えた途端に昨日同様、大荒れの天気に。昨日より気温はぐんと下がり強雪と霰が降って来る。良い判断だったというよりは、ただ単に運が良かっただけのような気もするが、このメンバーは「持っている」ということで全員の意見が一致する。

前毛猛山頂にて 【5月3日】霰(強雪)午後遅くから晴れ
 昨晩はずっと天気が悪く、今朝も全然回復していないが、予報的にはもうすぐ回復するはず!ということでいつもの時間に出発する。幕場から北方の尾根に乗るのにはっきりしない斜面を下るが視界が悪く数十m東側にルートを外してしまう。急なルンゼ状の雪壁をトラバースしてルートに戻る。ここから独標1,176mまでは尾根が極端に細く切り立っている岩稜帯&藪漕ぎとなり本ルートの核心といったところか。1ヶ所、細引きに体重をかけて降りるところも出てきて随分と時間を要するが、相変わらず天気も悪くとにかく安全第一で慎重に歩を進めて行く。ようやく安全地帯に入るとそれに合わせて天気も急回復。前毛猛の登りも藪漕ぎに苦しめられるが、久々に顔を出したお日様のもと気持ちは軽い。やがて山頂に到着し、この長いルートを完歩出来る目途も立ってきた。2回目の握手大会となり盛り上がる。山頂から100mほど下った雪面を整地し本日の宿とする。守門、浅草岳の景観が素晴らしい良い幕場だった。

延々と歩いて来た尾根をバックに 【5月4日】終日快晴
 今日は朝から快晴だ。ようやくGW山行らしい天気になって来た。六十里越まで相変わらずの藪漕ぎだが踏み跡もかすかに出てきて順調に進む。3時間ほどで六十里越に到着。国道はまだ開通しておらず国道に車は無い。車が入れないのでこの先の浅草岳までの登山道にも人の気配は皆無だ。ようやく藪から解放されてメンバーの顔も明るい。ただここまでの疲労は相応に溜まっており、気持ちは軽いが足取りは重いといったところで、休憩を取りまくりでゆっくりゆっくり歩を進めて行く。今日は天気もいいし時間にも余裕があるのでこれでいいのだ。やがて南岳に到着し、この先の平らな小ピークを今夜の宿とする。予定より1日早く下山出来そうなのと電波も通じたことから明日の宿は民宿を予約することが出来て温泉と大宴会にメンバーの期待が膨らむ。

【5月5日】終日快晴
 今日も朝から快晴。無風なので暑いくらいだ。登山道と雪を拾って鬼が面山、北岳、前岳を経て浅草岳山頂へ。ここからは遥か遠くに奥只見丸山スキー場、未丈ヶ岳、毛猛山、前毛猛山、そしてそれらの山々を繋ぎ歩いてきた尾根が全て見えてちょっとジーンと来る。360度の景色と達成感、充実感をメンバーと共有し最後の下山にとりかかる。残雪期ルートを使って3時間ほどでホテル大自然館(廃業)前に到着、長い山旅をここで締めくくった。

長旅の終焉地、浅草岳山頂にて
〈コースタイム〉
【4月30日】 奥只見丸山スキー場(11:30) → 未丈ヶ岳(17:00) → 独標1,430m(幕)(17:30)
【5月1日】 幕場(5:00) → 赤柴山(7:40) → 独標1,204m(幕)(11:00)
【5月2日】 幕場(6:00) → 毛猛山(12:30) → 独標1,268m(幕)(14:00)
【5月3日】 幕場(6:00) → 前毛猛山(15:30) → 前毛猛山北東尾根co1,150m(幕)(16:00)
【5月4日】 幕場(6:00) → 六十里越(9:00) → 南岳(幕)(13:30)
【5月5日】 幕場(6:00) → 浅草岳(9:30) → ホテル大自然館前(13:20)

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