山行日　2023年9月30日～10月1日
メンバー　(L)荻原、高橋(史)

　越後三山森林公園を基点に一人で越後三山を周遊縦走した時に見掛けたかぐら滝が圧巻で「落ちる水」が語源のオツルミズ沢の遡行を初めて意識した時だった。具体的に遡行を計画したのは4年前だが悪天で入渓すら出来ず、2年前はかぐら滝上まで行ったが、やはり悪天予報で撤退。今回も悪天予報でぎりぎりまで判断に迷ったが悪天の合間というか隙を突く感じでようやく遡行出来たので記録として残すことにする。この沢は登攀要素の強い沢とよく言われるが、登攀自体に困難なセクションは無く、どちらかというと高巻きを含めたルーファイ力が問われる沢なのかな？という印象が強かった。

【9月30日】高曇り一時晴れ 午後から雨
　今夜は雨のビバークが確定のようなので出来れば駒の小屋まで、最低でも増水の影響が少なめと思われる1,400-1,500mくらいまでは上がりたいと思い、暗いうちからの出発とする。オツルミズ沢出合の少し前でかぐら滝がその姿を現すが2年前よりだいぶ水量が多い。今週はずっと雨だったので増水気味のようだ。とりあえず明るくなるとともに巻き道を使ってかぐら滝下へ。やはり水量は多く、滝の轟音に圧倒されそうになる。

　かぐら滝の登攀は水流の右壁を登る。簡単なクライミングではあるが、本日最初の1本になるので慎重を期してロープを出す。50mいっぱいで滝上に出る。そこからは河原状をしばらく歩き、いつもは雪渓で覆われているゴルジュ帯入り口に到着。今年は日本全国どこの沢でも過去に例のない雪渓の少なさで、ここも例外ではなく、あるはずの雪渓は皆無である。雪渓は無いがゴルジュの通過はそこそこ時間がかかりそうで、今夜の雨に備えて今日中に1mでも標高を上げておきたい我々は迷わず右岸からの高巻きルートを選択する。高巻きルートは最初は踏み跡明瞭でグイグイ進んでいく。しばらく行くと踏み跡はいくつかに分かれ不明瞭となって来るが、藪は薄目でどこを通ってもあまり時間はかからない。イメージ通りのルートでゴルジュ帯の上に出て見上げると圧巻のサナギ滝がその姿を現す。素晴らしい景色でまさに「落つる水」なのだ！

　写真を撮っていよいよサナギ滝の登攀に入る。1段目は定石通り右岸から高巻く。踏み跡は明瞭だ。二段目以降も右岸から簡単な岩稜帯を登っていく。ロープの必要性は感じない。最上段近くになって水流側へトラバースするとここでようやく傾斜が立ってくるので1ピッチのみロープを出す。記録に良く出てくるクラックは難しいとの記載が多数で警戒していたが、ワイドの経験があれば5.5か5.6くらいと言ったところか？ここを突破するとサナギ滝上となり、時間はまだ10時と順調だ。大きなトラブルが無ければ今日中に小屋まで行ける目途がついて精神的にも楽になる。

　サナギ滝上からのゴルジュもご多聞に洩れず雪渓は皆無で、ゴルジュ自体も比較的浅いので陰湿な感じは全くない。一か所右岸より小さく巻く以外は水線通しで行ける。しばらくで大滝80mが眼前に現れる。なかなかの迫力でこれも素晴らしい。前衛の滝は右岸より高巻いて5mほどの懸垂で大滝の取付きに至る。大滝の登攀も簡単なのでロープは出さなくても良い感じだが、時間もあるので2ピッチ目より一応ロープを出して進む。声が届かず時間を若干ロスするが、それでも大滝上に出たのが13時で今夜の小屋ビバークを確信、二人とも笑顔がこぼれる。
　大滝上も直登不能な10-20mクラスの滝が多数出現するが高巻きは必要最小限のルート取りで上手く抜けていける。また雪渓もいくつか出てくるが通過に支障をきたすような規模のものは無い。14時頃より雨が降り始め、途中から強雨に変わってあっと言う間に増水してくるが、周囲は既に源頭の風景となり命の危険は感じない。1,620m二俣に到着し、今夜の増水に怯えながらの悲壮なビバークを回避出来たことを祝して握手大会となる。最後は二人ともヘロヘロになりながら暗くなると同時に小屋に這い上がる。横ちんが持って来てくれた梅酒を二人で回し飲みしながらの小屋ビバークは安心と幸せに包まれた会心のビバークだった。

【10月1日】雨
　今日は登山道を降りるだけ。天気は悪いが増水は関係ないので安心だ。昨日からの雨が集まって越後山塊を血管のように走り流れる白い水線を安全地帯の登山道から眺めつつ、長年のオーバーユースで慢性化した膝痛が発症し、足を引きずりながら登山口まで下って、本山行も終了となる。