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雪稜登山・涸沢岳西尾根
高橋 俊介

山行日 2023年12月28日~30日
メンバー (L)高橋(俊)、梅田、軽部(剛)

 残照の中、両雪庇が連なる稜線をトップで歩いている。振り返ると北アルプスの穂高連峰に続く峰々をバックに歩いてくるメンバーがなんともカッコよくて絵になる。夕闇が迫ってきており早く降りなきゃと思う一方で、この世界観にいつまでも浸っていたい気持ちになる。2023年最後に大きなプレゼントをもらえた気がして、最高の気分であった。
 90周年パーティーの際に、年末年始どこかに行かない?と梅ちゃんから声をかけてもらい、なんとなく涸沢岳西尾根に決定。小生は数年前に本ルート行ったことあるが、ラッセルがひどくて途中敗退している。今回は気象条件も良さそうなので条件が合えば奥穂まで足を伸ばせるかもと期待して山行計画を立てた。

【12月28日】
 新穂高温泉まで夜行バスで入り9時過ぎに出発。槍平へ続く蒲田川林道にはすでに複数パーティー入っていると思われる。白出沢を越えたすぐ先の「トウヒ」の看板が目印の涸沢岳西尾根取付きである。トレースも残っており踏み跡からすると数パーティーは入山しているようだ。かつてこのルートを登った際は末端からどラッセルであったが、今年は雪が少なく下部は笹薮が少しうるさいくらいの感じ。1,800m過ぎから急登が始まる。途中、大量のロープがデポされていたところで一本取っていると、上から若者複数名が降りてきた。学生パーティーである彼らの装備らしく、聞くところ大学山岳部で、極地法での涸沢岳を目指しているとのこと。トレースに助けられ、思ったより早く2,350mに到着。すでに複数テントが立っており、一段下がった窪地にテントを張る。小生は今シーズン初の雪山であるが、山に入っているだけでめちゃくちゃ楽しい。メンバーにも雪からの水作りだけでも楽しいと連呼していた気がする。

【12月29日】
 3時起床。夜から雪がちらつき始め、10cmくらいは積もっただろうか。キムチラーメンを食べて、5時過ぎにガスの中を出発。予報では午後から回復基調にあり稜線に出るころには視界も良くなってくると期待。JSP手前の森林限界でハーネス+ガチャを装着。いよいよここから雪稜帯に入ると思うと気が引き締まる。JSPで90度方向が変わり、視界が悪いと下山時に枝尾根に吸い込まれそうなのでここに赤旗を立てる。2人組みの先行パーティーを途中で追い抜き、雪庇帯をトップでラッセルして進む。やはりノートレースのルートを自分たちでルート引くのはとても気分がよい。両雪庇帯を慎重にラッセルして進む。まだ視界はうっすらとガスの中であるが、ここで視界が悪いとルート取りに戸惑いそうである。F沢のコルへいったん少し下りここからルンゼ状の雪壁に取付く。ダブルアックスがしっかり雪面に効くので下から見ていたより悪くなかった。ルンゼを詰め上げると涸沢岳へ続くリッジ状に乗り上げる。リッジに乗り上げた頃から天気が回復し、紺碧の空をバックにそそり立つ北アルプスの峰々が見渡せる。リッジを詰めて行くのだが細かなアップダウンが続き思っていたより涸沢岳までが長い。また天気は良いのだが予報より強風が吹き荒れており、やはり冬の北アの稜線に居るんだなと改めて感じさせる。
 涸沢岳に着くとすぐ下に穂高岳山荘が眼下に見える。強風で寒いので涸沢岳では写真も撮らずにすぐに山荘に向かう。
 穂高岳山荘が建つ白出乗越に到着するが、ここはコル状になっているので風の通り道になっており、体感風速15~20mくらい、めちゃくちゃ寒い。冬期小屋の入口を探すが見当たらず、少しでも風を避けたいので小屋の陰に身を隠す。奥穂への最後の登りの前に準備を整えて出発。夏道同様、鉄梯子を登っていくが途中から氷壁をダブルアックスで登っていく。
 寒さに震えながらも1時間ほどで厳冬期の奥穂登頂。山頂の目印になっている祠もエビのしっぽで雪塊になっている。とにかく寒いので記念写真だけ取ってすぐに下山開始。かるべっちはシングルアックスなので穂高岳山荘への氷壁クライムダウンはこわいと思い、50mロープ 2ピッチで懸垂にてコルまで降りる。

奥穂登頂!

 あとはテントまで戻るだけなので、奥穂へ登頂できた喜びをかみしめながらゆっくりと来た道を戻る。F沢のコルへ下る雪壁は昨日すれ違った大学生パーティーが張ったと思われるFIXロープが張り巡らされており、ありがたく使わせてもらった。夕暮れの中を登ってきた稜線を歩くメンバーの雄姿がこの上なく素晴らしい。
 12時間以上の行動時間になってしまったが、なんとかヘッデン行動にならずにテント場に戻ってこれた。
 スコッチとワインとブランデーで祝杯を挙げつつ、サラミと塩漬け肉とトマトパスタと、なんとも贅沢でダンディーな夜を過ごした。

2023年最後のプレゼントになりました。

【12月30日】
 朝から快晴、すばらしい眺望が広がっている。今日は下山するだけなのでのんびりと起床。大晦日から天気は下り坂予報であるため、昨日に比べると登ってくる人は少なめ。ただ、昨日は多くのパーティーが入山しておりトレースはばっちり。
 穂高平小屋に着くと昨日登ってきたルート全容が見渡せる。稜線は雪煙が舞っており今日も風は強そうだ。登ってきたルートを改めて振り返り、再度、奥穂まで行けた喜びをメンバーで共感した

〈コースタイム〉
【12月28日】 新穂高ロープウェイ(9:00) → 白出沢(11:00) → 2,350m C1(15:40)
【12月29日】 C1(5:10) → 奥穂高岳(11:40) → ~C1/C2(17:10)
【12月30日】 C2(8:10) → 新穂高ロープウェイ(12:20)

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