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縦走・飯豊連峰
小芝 泰規

山行日 2024年5月2日~5日
メンバー (L)小芝(泰)、小芝(麻)

 昨年末から仕事が忙しくて、しばらく何もしない週末を楽しんでいた。4月の中旬ごろに以前の生活ペースに戻ってみると、すでにGW直前!休みの目途は立ったが、何も計画が無いことに焦りながら急ごしらえで今回の計画を立ち上げた。GWの飯豊縦走はアクセスが悩ましく、計画に思いのほか時間を使うので、一例として記録に残したいと思う。
 当初の計画では川入切合(かわいりきりあわせ)登山口から入る予定だったが、中津川口(大日杉登山口)方面の道の分岐から閉鎖されていたので、中津川口からのスタートになった。例年雪の影響で5月初めまでは通れないようだった。

【5月2日】晴れ
 大日杉登山口から長之助清水の先まで登山道を登ると、1,000mぐらいから雪が出て来た。気温が高く照り返しも強いが、風が心地よい。体が慣れていないので、1時間おきに休憩しながらペースを抑えて登った。登山道は地蔵岳からほぼ直角に左に折れるので、その手前でこれから進む尾根道を横から眺めると長い道のりに感じる。
 一部夏道を踏み腐った雪を先行者の踏み跡を使わせてもらいながら進んでみると、思ったより早く切合小屋に到着した。トイレを含めとてもきれいな小屋で、大切に使われている事がわかる。
 後からソロとペアの2組が到着したが、皆静かで19時過ぎには就寝した。

長い。暑い。 早くビール飲みたい。快適な切合避難小屋

【5月3日】晴れ
 5時に出発し、まず本山小屋を目指す。
 既に気温は高めだが、アイゼン歩行しやすい雪の締まりだ。しかし、気温が上がり30分もすると雪が緩み始めた。出発は早い方が効率が良さそうだ。草履塚に着くころにはズブズブの雪になり、夏道が露出してきたのでアイゼンを外した。
 本山小屋辺りからは飯豊連山の絶景の真っただ中を歩くことになる。飯豊山を越えて御西小屋にたどり着くと、大日岳がすぐそこにある。飯豊連峰最高峰。往復4時間。猛烈にピストンしたい衝動に駆られたが、計画には入れていない。この往復が山旅を忙しなくしてしまうのだ。初志貫徹、一路梅花皮小屋を目指す。大日岳よ、また会う日まで!
 時間に余裕があるのでのんびりと景色を楽しみながら歩いた。余裕があるのは良い事だ。途中で歩きやすい雪道に導かれて登山道を外したので少し藪を漕いだが、14時過ぎに梅花皮小屋に着いた。小屋内に自分達以外に4組ほどいたが、2階建ての広い小屋内は全く余裕で広々使わせてもらった。水場の水量は豊富だし快適そのものだった。ただ、外は風が強くテン場に1張だけ張られたテントは風のため大きく変形していた。

切合(きりあわせ)小屋を出発御西小屋から大日岳を望む

【5月4日】晴れ
 昨日止むはずの強風がまだ続いていたが、満天の星空で気温も低くないので悲壮感はない。北股岳までの急登ではアイゼンを履いたが、登りなら無くても行けそうだった。一気に登ると、あとは標高的には下り調子となり、旅も下山に向けた後半戦の感じがしてくる。
 稜線上で雪がついているのは尾根の東側がほとんどで、雪を被るか被らないかの位置に設定された登山道が絶妙な気がした。少し歩くと遠くに今日の目的地である杁差小屋も見える。あまりの見晴らしの良さに近く感じるが、5時間ほどかかる。

やさしい景色に癒される今にも崩れそうな巨大雪庇

 日差しが強くなってきたが、強風はさわやかな風に変わった。北股岳から先は滑らかな山容にまだらに雪が付き、壮大な絵画を見るようだった。
 杁差小屋には13時過ぎに着いた。残雪の飯豊連山をほぼ見渡せる素晴らしい小屋だった。
 佐渡に沈む夕日まで見られる贅沢なロケーションにありながら通年無人の避難小屋で、地元のハイカーは残雪期の景色が最も美しいと言っていました。

日本海が見えてきた!佐渡島に沈む夕日楽しく歩けました! お疲れ様でした

【5月5日】晴れ
 大石ダムの2km登山口寄りにある東俣彫刻公園に12時半にタクシーを頼んである。小屋からは7時間ほどの距離だが、余裕をみて3時過ぎに出発した。満天の星空だが、既に暑い。下山路はほぼ夏道で、たまに雪渓を通過するが、アイゼンは必要なかった。
 彫刻公園には11時過ぎに到着した。有人の美術館でもある立派な公園なのかと勝手に思っていたが、この公園は訪れる人も少ない荒れ気味の公園だった。水もトイレも自販機も無く、周囲の沢はダムのバックウォーターで沢水の確保が難しいので注意。スマホは基本的に使えないが、大石ダム方向に林道を歩いて公園が終わる手前辺りの道路わきで、アンテナ0でauが何とか通話出来る場所があった。ピンポイントなので発見は難しいかもしれない(docomoはダメだった)。
 残雪期の飯豊をたっぷり楽しめる好ルートでした。あともう1日足して大日岳ピストンを加えられればより充実感の高い縦走になると思います。

【おまけ】
 下山後はタクシーとバスを乗り継いで登山口の車をピックアップした。道すがらにある白川湖の水没林は雪解けの時期にだけ見られる風物詩で、湖の中に樹木が茂る不思議で美しい景色が広がっている。いつかは湖畔のキャンプ場に泊まってみたい。
 登山口駐車場からはおいたま温泉 賜の湯に直行して汗を流した。体がすっきりした後は腹を満たそうということで、米沢市内に一泊して居酒屋で祝杯をあげることに決めた。しかし、宿泊当日の夕方の事なので宿が見つからない。酒飲みたさに粘り強くスマホをいじっていると、たまたまキャンセルが出た1室をなんとか探し当てることが出来た。18時過ぎにホテルに到着後、すぐに近くの居酒屋に行った。通りは閑散としているのに店内はにぎわっていて、酒も料理もおいしかった。
 翌日は道の駅やラーメン屋など巡りながら宇都宮まで下道をドライブし、帰京した。
 急ごしらえの計画でしたが、充実した楽しいGWになりました。おススメです。
 ■天気
 全日晴れ。気温高く6月並。
 ■装備
 レインウェア上下、冬靴、12本爪アイゼン、ピッケル、ストック
 ■水場
 ・長之助清水は細いが問題なし。
 ・梅花皮小屋豊富。他の稜線の水場は全て雪中。
 ■避難小屋料金
 ・切合避難小屋 2,500円/人
 ・梅皮花避難小屋 2,000円/人
 ・杁差避難小屋 無料
 ■交通費
 ・タクシー1:東俣彫刻公園~越後下関駅(代行バス停まで)5,200円 荒川タクシー㈱ 0254-64-1042 ※途中商店に寄った。
 ・JR代行バス:越後下関駅~手ノ子駅 860円/人
 ・タクシー2:手ノ子駅~大日杉登山口駐車場 11,000円 めざみ交通㈱ 0238-72-2137
 ■立ち寄り湯
 ・おいたま温泉 賜の湯 330円/人
 ■居酒屋
 ・居酒屋えん 米沢牛の牛すじピザ 980円が絶品!地酒のコンディションも良かった。
 ■その他
 JR米坂線は運休していて代行バス運行中。HPの時刻表が最新ではなかったので、事前に問い合わせた方が良い。

〈コースタイム〉
【5月2日】 大日杉登山口(7:40) → 切合避難小屋(14:20)
【5月3日】 切合避難小屋(5:00) → 梅花皮小屋(14:20)
【5月4日】 梅花皮小屋(5:20) → 杁差避難小屋(13:20)
【5月5日】 杁差避難小屋(3:20) → 東俣彫刻公園(大石ダム)(11:00)

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