山行日 2024年4月6日
メンバー (L)荻原、永岡、清水、川口(修)
不帰Ⅲ峰Dルンゼといえばスティープスキーの大クラシックルートである。山スキーという世界を知ってしまった以上は避けては通れない名ルートの一つであり、ルンゼ滑降の登竜門的な位置づけにもなっている。とは言ってもゲレンデなどでちゃんと基礎スキーなどを学んだ経験がなく、雪山登山の延長線で山スキーを始めた私にとって、この傾斜は結構なプレッシャーであり、行く前から悶々とした日々を過ごす。ドロップポイント(DP)まで行くには行くが、天気や雪の状態を理由に8割方は敗退する気持ちでいたが、天気予報は決行日が近づけば近づくほど良くなってくるではないか!これでは言い訳できないじゃん(泣)・・・、と更に悶々度が高まってくる中、ついに決行日が来てしまった・・・
【4月6日】終日無風快晴
登りの遅いシニア隊なので朝一番で並ぶべく7:30には八方ゴンドラ前の駐車場に到着。予定通り8時過ぎのゴンドラに乗り込み9時ジャストにはリフトトップを出発する。山頂まではかなりの余裕を見て3時間半としていたが、シニアメンバーの足は年々順調に遅くなっており、余裕を見た予定より更に10分遅れで山頂に到着。写真を撮って早々にDPへ向かう。
この稜線の下降は通常はピッケル・アイゼンが必要なところだが、今回は雪が少なかったのでアイゼンのみで問題なく通過する。不帰Ⅲ峰とのコルは雪庇が発達しているように見えたので、コルより一段上の唐松岳側のプラトーをDPとすることに決定。当初は稜線からルンゼにドロップしたところでスキーカットによる雪崩チェックを行う予定でロープとハーネスを持参したのだが、DPから下を見るとロープの長さくらいはあっという間に流れてしまいそうで、不慣れなメンバーに変にビレーされるとトラブルが起こりそうな気配を強く感じたので、今回はロープ不使用でルンゼに飛び込むことにする。天気は相変わらず無風快晴、気温も上がって稜線の雪も柔らかい。恐らくルンゼ内の雪はもっと柔らかいであろう。条件は揃っていることから退却の判断は出来ない。出来れば先行者がいれば精神的に楽なのだが、今のところ誰もいなく期待は出来ない。深呼吸をして意を決してルンゼに飛び込む。見た目以上に傾斜が強くて緊張するが、最初のターンを無事にこなして滑降成功を確信する。
何回かターンをして標高差で100mほど下ったところで無線で後続に連絡、ざっくり100m間隔で降りてくるよう指示を出す。しばらく急傾斜が続くが標高差で500mも下るとやがて傾斜は緩み、少し余裕が出てきたところで周囲を見れば雄大な北アルプスの唐松沢のど真ん中で、ちっぽけだけど無事に自分の二本足で立っている己を感じ、生の実感を味わうことができた。これがスティープスキーかぁー!急傾斜だというのみならず雪崩やクラックなどのリスクを乗り越えた時の安心感や喜び、興奮が癖になるのであろう。メンバー全員が急傾斜部分の滑走を終えたところで、あとは雄大なロケーションの中、メローな快適斜面を各自思い思いに滑っていく。
無名沢合流直後の南滝は1週間前の情報で水流が出ており通過困難とのことだったので、無理せず右岸から高巻いて越える。その後はお決まりの大デブリ地帯を歩いて通過、南股入沢沿いに出るとすぐに湯ノ入沢が入ってきてここはブーツのまま渡渉する。場所によっては膝位までの水位で以前来た時より水量は多いと感じた。この渡渉を終えてようやく安全地帯。しばらく林道沿いに滑っていくが、やがて途切れ途切れとなりスキーと歩行の切り替えが面倒になった来た頃、シートラに変更してあとは歩いて二股へ。このルート、単独では無理だな(私の場合)。やはり信頼できる仲間がいてこその滑降成功であった。
さぁー、次はCルンゼだ!?
〈コースタイム〉
八方尾根リフトトップ(9:00) → 唐松岳山頂(12:40~12:55) → DP(13:10~13:20) → 南滝上(途中大休止あり)(14:20) → 二俣(途中大休止だらけ)(17:50)