山行日 2025年1月11日~13日
メンバー (L)鈴木(一)、石毛、大瀧
粟ヶ岳は下田山塊のほぼ最前衛に位置する標高1,293mの山である。三条と加茂の市境となっており、山麓には県民休養地が広がるなど市民に親しまれている。以前、無雪期に単独で加茂市側から登った時、7合目の粟ヶ岳ヒュッテ(地形図には砥沢のヒュッテと記載)に立ち寄った。加茂山岳会の方々によって丁寧に整備されており、その綺麗さに感心したとともに、何本かのスキーがデポされていたのに気付いた。確かに、山頂直下の斜面を滑ったら気持ち良いだろう。いつか粟ヶ岳を滑りたいと強く思ったが、まだ見ぬ冬の粟ヶ岳にスキーで乗り込む自信はない。まずは歩きで挑むことを決め、例会として企画することにした。
本山行の直前、日本海側は「災害級の大雪」に見舞われていた。不要不急の外出を控えるようテレビでしきりに連呼しているのに多少後ろめたい気持ちを抱きながらも、2日目が好天という予報を信じて決行を決めた。新潟県に入ると大粒の雪が降りしきり、路面も真っ白だ。長岡市郊外の漫画喫茶で前泊したが、市内でも道路脇には1mほどの除雪された雪が積もっている。翌日の行程に不安を覚えながらの就寝となった。
朝食を摂って、登山口に着いたのは8時前。除雪終了点となっている駒出川に架かる橋脇のスペースに車を停めて、道の様子を見に行った。目指す方は案の定、何もない。試しに足を踏み入れると、平地で腿か腰辺りまで沈む。これでは日のあるうちに尾根に取り付けるかどうかも定かではない。当初の周回コースを諦め、下田コースでのピストンに計画を変更した。とは言え、下田コースにも全くトレースはない。
意を決してノートレースの雪面に一歩目を記す。登山口までの1kmは除雪されておらず、平地のラッセルを強いられる。途中、車に忘れ物を取りに戻るハプニングもあり、登山口に着くまでに1時間を要してしまった。ここからは北五百川沿いの遊歩道を辿る。支沢を一本橋で渡るが、この手前300mぐらいが細く、スキーは担がないと無理そうだ。ここから少しずつ傾斜が出て、猿飛滝の落口を渡渉。元堂という開けた場所から本格的な登りがスタートする。
尾根を登るだけなので迷うことはないが、ピンクテープの類いがほとんどないため、ルーファイには苦労させられた。雪が降ったばかりで沈降しておらず、至る所で踏み抜いてしまう。これには相当消耗させられ、休憩の回数は増える一方。昼前ぐらいからは山に雪雲がかかってみぞれが降ってきた。5合目の粟薬師が今日の目的地で、早く着いたら明日のためにトレース付けに行こうなどと話していたがとんでもない。ワカンにべったりと着く湿り雪にも苦しめられながら、幕場に着いたのは16:00。500m弱を登るのに5時間以上かかったことになる。
疲れすぎてテントを立てるのも億劫。しかも自分が内張を忘れてきてしまった事が判明しガックリ。標高が低かったので事なきを得たが、本当にやってはいけないミスを犯してしまった・・・。天気は安定せず、雪が降ったり、雨が降ったりでテント内はびしゃびしゃ。標高が低い山では、冬でもフライシートが必要なのだと気付かされた。
濡れた衣服は体温で乾いてくれず、寒くてあまり眠れず翌朝を迎えたが、その割に体調は悪くない感じ。6時半には出発したかったが、色々ともたついてしまい、歩き出したのは7時。朝イチからラッセルで山頂にアタック開始だ。天気は昨日と打って変わって快晴無風。少しの登りで稜線に出ると、一気に視界が開けた。
絶景、絶景。目の前にはまっさらで手つかずの稜線、振り返ると広大な越後平野、右手には真っ白な守門岳。ここまでの苦労が報われた瞬間だ。遥かに遠くに佐渡も見える。ここからは階段状に高度を上げていく。先行者の野ウサギが付けたトレースを参考に歩みを進める。
800m辺りからは雪も軽くなってきた。遥か遠くに見えていた粟ヶ岳が少しずつ近付いてくる。
そして圧巻の牛の背に到達した。夏は岩場になっているこの辺りは、雪がリッジ状になっており、とても標高1,000mの風景とは思えない。雪庇を慎重にかわしてクリアしたところで、単独の人に追い付かれた。ここは先頭を譲って踏み跡を拝借しようと思ったが甘かった。スノーシューとワカンでは歩幅が合わないので、むしろ歩きにくかったようだ。先頭の大瀧さんが、歓喜から絶望の表情へと変わっている。
あとひと頑張り。それぞれのペースで最後の斜面を突破して、ちょうど12時頃、登頂を果たした。山頂は360度の大パノラマだ。遠くに真っ白な飯豊山、その向こうには朝日連峰も見える。粟ヶ岳から続く稜線には、青里岳、矢筈岳が存在感を示している。いつか踏み入れてみたい山域だ。
名残惜しいが、下山しよう。5時間かかった道のりを2時間かからずに幕場に到着。昨日とは打って変わって穏やかな幕場で、登頂の喜びを分かち合った。
翌朝は下りるだけ。登山口まで1時間半あまり。これには笑ってしまった。9時前には駐車スペースに到着。まだ周囲の温泉は開いておらず、長岡方面へ車を走らせて3日間の汗を流した。夏なら6時間ほどで往復できる山に2泊3日を掛けてチャレンジという事になったが、苦労した分、記憶に強く残る山行になった。何より、真っ白な雪面に自分たちでルートを刻む喜びは何物にも代えがたく、雪山の醍醐味だと実感しました。
最後に、ほとんどのラッセルを引き受けてくれた石毛さんに深謝です。
【1月11日】 | 駐車スペース(8:30) → 粟ヶ岳登山口(9:30) → 猿飛滝(10:40) → 粟薬師(16:00) |
【1月12日】 | 粟薬師(7:00) → 牛の背(11:00) → 粟ヶ岳(12:10~12:30) → 牛の背(13:00) → 粟薬師(14:20 |
【1月13日 | 粟薬師(6:45) → 猿飛滝(7:50) → 粟ヶ岳登山口(8:30) → 駐車スペース(8:50) |